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2010年10月22日金曜日

『恐怖の雪男』(1957)

 

恐怖の雪男 [DVD] (自伝を読む前に初見したときの感想です)

…正直バカにしてたんですが…悪かった!なんか真摯に作られてる映画でした。雪男自体はほとんど見せないし、ドラマはいろいろな思惑の人間側にあって、雪山ロケをした映像も説得力がある、ちゃんとした映画でした。タイトルの安っぽさでだまされました…。(^^;)

モノクロだし名前が出てくるのは二番目なので、カッシングは助演だと思ってましたが…バリバリの主役でした。すばらしかった!

物語は、チベットの山中に調査に来ているローラソン博士(カッシング)が、雪男探しのアメリカ人一行に合流し、雪山に出かけるというもの。アメリカ人は雪男を生け捕りにしてお金儲けするのが目的で、学術的な興味のローラソンとはしばしば対立します。そして「雪男」にトラウマ的な強迫観念を抱いている男や、危険な冬の雪山登山に反対するローラソンの妻(手伝いとしてチベットに同行している)などが絡みます。
最初、ローラソン夫妻はチベット僧の元で世話になっているのですが、雪男探しに出かけるローラソンに、僧は「雪男を探すなら謙虚になることだ。権力を考えず、自分の尊厳を考えろ」というようなこと言います。このあたりが全体のテーマになります。

もとはテレビだったそうで、なんとカッシングはそちらでも同じ役をやったそうです。テレビ版を忠実に、ただし予算は多くして映画化したものだそうです。監督と脚本家による音声解説があるのですが、それに出てくる話がいろいろ貴重でした。カッシング情報(?)もいろいろ。

びっくりしたのが、カッシング主演で前にYoutubeで見た『1984』(ジョージ・オーウェルの『一九八四年』の、BBCドラマ化作品)が、生放送番組だったということ!…そういえば、テレビ草創期ってドラマも生だったんですよね…。生放送であの題材、そしてあの壮絶な演技をやってたのか!と、ちょっとショックなくらい感銘を受けてしまいました。日本でもDVD出してほしい…!

監督によると、カッシングはテレビの生放送の「おおぜいに見られてる感じ」が好きだったそうです。スタジオでは見られてるって実感はあまりなかったんじゃないかと想像しますが…とにかく生放送のプレッシャーを楽しんでいたということでしょうか。舞台も好きだったでしょうね。根っからの役者さんなんだなー…。

(追記・のちに読んだカッシングの自伝では、生放送のプレッシャーは半端でなく辛くて、主治医にちょっとアブナイ薬まで出してもらったという話がありました。効き目がなくてやめたそうです。まーいろいろと、監督は知らないこととか、カッシング自身が隠してたこととか、あるんでしょうね)

ほかにも、真剣なシーンを撮ってても、カットと言われたとたんに歌って踊りだしたとか、こっそり小道具を持ち込んで本番で初めてそれを使うので、みんなそれを期待して(?)見ていた、というような逸話も。「プロップ・カッシング(小道具のカッシング)」という異名の話が、情報漁ってると出てくるのですが、そこからだったんですね。(クリストファー・リーは「そんなアダナは聞いたことがない」とインタビューで言ってましたが(笑))なんかスタッフから愛されてたというご本人のキャラクターが、少しだけ見えてきました。(…ということは、マイブームも後半にさしかかったかな、とかチラリと思う自分でした…(^ ^;))
途中で眠くなって断念したので、続きの音声解説を聞くのが楽しみです。

金目当てのアメリカ人を演じたのはフォレスト・タッカーという米国人俳優さんなのですが、なんか見覚え、聞き覚えがあります。西部劇とかにたくさん出ていたようです。金儲け主義者といってもちゃんと内面のある、そうなるだけの経歴設定があるキャラでした。終盤はけっこう圧巻な見せ場もありました。
テレビ版でこれを演じたのは、なんとスタンリー・ベイカーだったそうで、「ええーっ!そっちも見たい…」と指をくわえてしまいました…。スタンリー・ベイカーはのちにナバロンの要塞などに出た人気俳優で、みずから監督した『ズール戦争』を昨年見て、すっかり感服した記憶があります。そのテレビ版て、DVDとかになってないのかな…。ピーター・カッシングとスタンリー・ベイカー共演だなんて~~!(よだれ…(^^;))

余談ですが、映画のなかで、ローラソン博士の妻の名前が「ヘレン」でした。カッシングの実際の奥さんの名前と同じなので、なんか最初耳について落ち着きませんでした…。カッシングに関するコメントを聞くと、プライベートの愛妻家話が必ず出てくるので、なんか覚えてしまいました…。(五歳年上の奥さんで元女優さんだったらしいです。写真を見たら、カッシングが横に並ぶと「美女となんたら」に見えるくらい(?)、エレガントな美人でした…妬く気も失せました…(笑))

(こちらも後に読んだ自伝では、感情移入するためにカッシング自身が提案してそういう名前にしたんだそうです。なんかもう…言葉もありません。このお二人の絆の話には!)

2010年10月14日木曜日

『フランケンシュタインの復讐』(1958)

 

フランケンシュタインの復讐 [DVD] カッシングのフランケンシュタインシリーズ二作目。一作目の最後でギロチン刑に処せられたはずの男爵がじつは生きていた!(笑)という、もう「一本目が当たったからムリヤリ続編作ってみました!」というのが見え見えの話なんですが、期待しなかったせいかすごくおもしろかったです!カッシング最高です。惚れなおしました!

お話は、ギロチンを逃れた男爵がシュタインと名前を変え、医師として開業しつつ例の研究も続けていて・・・というもの。新しい「クリーチャー」も出てきますが、一作目ほどグロいビジュアルではありません。クリーチャー自身の心理や悲劇性というのもちゃんとあって、キャラクターとしての格が上がっています。役者さんもよかったです。

一番気になってたのは、「ムリヤリ男爵が生きてたことにする」あたりの言い訳をどうつけてるのかな、というところだったんですが・・・。すごい。ちゃんと理屈が通っている。関与する人間の心理がウソくさくなくて。
それは全体にわたって言えることで、低予算映画なのに脚本はちゃんと作られてるんですね。(まあ人体パーツの扱いとか、「目玉」の動きとかは今見ると爆笑ものですけど(笑)、それは時代ということで)

・・・なんか甘えた設定のB級映画とかで汚れた目から見ると、当たり前のように実現している水準の高さにびっくりです。・・・これは、カッシングに限らず、出演者の演技力にも負うところ大だと思います。脇役まで、こんなに年齢の高い人(つまり役者として経験を積んでいる人で、当然うまい)がたくさん出ているという贅沢さは、日本のこの手の作品ではなかなか実現されないことですよね…。

男爵の助手になる若い医師をやってた方に見覚えがあるのですが、ちょっと何で見たのか思い出せません。
研究室の番人役のおじさんは・・・あらまあ、『吸血鬼ドラキュラ』で居酒屋のおやじさんをやってた方では?(笑)

カッシングのフランケンシュタイン男爵は、本当に見事でした。というか脚本段階でも、男爵は狂人ではなくて、あくまで「医学の天才」である・・・というラインを崩してないんですね。だからその才能に引かれて協力者が現れる、という展開に無理がない。原作と違って罪悪感はないものの、邪悪な意図もないのです。べつに人を害そうなんて思ってない。ただ、その熱意と優先順位が世間からは認められない領域にいってしまってる、というのが悲劇なんですね。

ボタンホールに必ず花をさしたり、一作目よりさらにエレガントになったような気がします。女がらみがないので(キャラは出てきますが、色恋沙汰はなし)、かっこよさが際だちます。うーん、やっぱ男爵は研究の前には女なんか眼中になし、という方向の「異常さ」が似合います。サービスのためとはいえ、別の作品で女に手を出す男爵はなんとなく「かっこわるい」です。(とはいえ、一作目は「カッシングの珍しいキスシーンが見られる」という意味でも貴重なのですけど(笑))

冒頭の処刑前の髭面から始まって、正装やら白衣やら、コテンパンにやられた手負い姿(上半身ヌード。この方は脱いでもあまり嬉しくないけど(笑))やら、はたまたデヴィッド・ニーブンばりの洒落者紳士姿まで見られて、カッシング鑑賞ビデオとしても一級品です(笑)。しかしつくづく、上手い人ですねえ・・・

DVDの特典映像が少ないのですが、予告編は見てみたら貴重なものでした。本編にはない男爵の述懐が使われてるんです。これは予告編用なのかな。もしかしたら本編で切られたカットなのかもしれません。とにかくカメラを見据えて自分の身の上を語る男爵、すごくステキです。

特典といえば、懐かしい『ブライド』の予告編も入ってました。そういえばこれもフランケンシュタインものですね。これのフランケンシュタイン役はスティングなんですよね。ミュージシャンとしてはファンなのですが、俳優としては贔屓目にも上手くはないので、見ていて恥ずかしいこともしばしば・・・(^^;)。これは見なかったんじゃないかなー。ケーリー・エルウィズ(『アナザー・カントリー』の美青年、転じて『キング・オブ・タイツ』(笑))なんか出てたのかー…。このころのジェニファー・ビールスはまたかわいいですね。なんだかこちらも見たくなりました。
 

2010年10月9日土曜日

カッシング&リーの22本/"Christopher Lee and Peter Cushing and Horror Cinema"

 

Christopher Lee and Peter Cushing and Horror Cinema: A Filmography of Their 22 Collaborations

(すでにこの本には触れておりますが、購入したばかりのときの感想です) 

 ピーター・カッシングクリストファー・リー共演作の解説本"Christopher Lee and Peter Cushing and Horror Cinema: A Filmography of Their 22 Collaborations" の感想です。といっても洋書なので、まだごく一部を拾い読みしただけですが・・・。

タイトル通り、お二人は22本の映画で共演したそうで、そのすべての映画に関するデータと、撮影中の逸話、メディアの批評などをまとめたものです。初めて見る写真もたくさんあって、目の保養です(笑)。カッシングとリーが寄稿した前書きもついています。カッシングは出版される前に亡くなったそうなんですが、原稿に目を通し、前書きを書く時間はあったようです。

写真を堪能したあとは、逸話として聞きかじっていた、「奥様の死で落ち込んでいたカッシングが『ホラー・エクスプレス』から降りようとしたのを、リーが引き留めた」という話のところを探して読みました。思ったほど萌えエピソードではなかったんですが(なにがあったと思ってたんだ!(笑))「カッシングの性分を知ったうえで、いくぶん強引に引っ張るリーと、繊細なカッシング」というキャラ通りの(?)エピソードでした。

『ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急“地獄”行(つくづくアレな邦題だ(笑))は、1972年にスペインで制作された映画で、カッシングとリー主演。シベリア横断鉄道を舞台にした、えらく壮大なSFファンタジー(?)+ゾンビ、というトンデモカルト映画です。テリー・サバラスも派手な役で出てます。(笑)

…スペイン入りしたカッシングは、空港で出迎えてホテルまで送ったプロデューサーに、「とても礼儀正しく、紳士的に」…「映画から降りて明日イギリスに帰りたい」、と言い出したそうです。理由は、最初にもらっていた脚本から書き換えられたものを見て、気が変わったということなのですが・・・。実際にはカッシングの奥様、ヘレンさんの死から一年も経たないうちの海外での撮影で、悲しみの余韻とホームシックとで気むずかしくなっていたらしい、ということです。奥様の闘病から死の間に20キロも痩せたという愛妻家ですし、もともと海外に出るのはあまり好きではなかったとか。
(しかしスペインに来てからこんなことを言い出すなんて。明らかに精神的に参って混乱していたんだと思いますが、プロデューサーの気持ちを考えるとかなりの「困ったちゃん」です…。が、今は「そんなとこもかわいい」とか萌えてしまう・・・(^ ^;))

すでに撮影を始めていたプロデューサーはショックを受け、一週間前から撮影に入っていたリーに大慌てで相談します。リーは「心配いらない。撮影後にホテルで会おう」と請け合って、カッシングを交えた三人で会うことに。

・・・リーは何をしたかというと・・・いきなり「カッシングを安心させるように計画された逸話」(どんなんだ?)を切れ目なくしゃべり続け、カッシングに「降りたい」などと切り出す隙を与えなかったんだそうです(笑)。一人でしゃべりまくったリーは「お休み」と場を切り上げ、「じゃあピーター、明日仕事場で会おう」とサラリと付け加えます。これで一件落着。(笑)

カッシングは一週間後にはすっかり陽気になり、プロデューサーに、「脚本も今では気に入っている」と告げて、気むずかしくなっていたことを謝った、とのことです。

ああ、それほど萌えないと思ってましたが、改めて読むと萌えますわ。やはり(笑)。(・・・)
だってこれ、やっぱりリーがいなかったら降りてますよね。絶対。ほかの部分からも、「リーがどっしりと支えてくれたから安心できた」というのがありありと伝わってきてたまりません。絶対気を変えさせられる、と自信満々のリーもいい♪(なんてイメージを裏切らない人たちなんだろう(笑))あらためてやおいなんかデッチ上げるのがバカバカしくなりますよ。まんま立派にJUNEじゃないか!(言いすぎ(^ ^;))

添えてある写真がまたいいです。撮影中の、二人の笑顔のツーショット。(激萌え♪)
『ホラー・エクスプレス』でのカッシングは、出演作の中でも群を抜くベッピンぶりをさらけ出しているのですが、その陰にそんなエピソードがあったと思うと・・・次にDVDを見返すときは冷静でいられなくなりそうです!(笑)

・・・こんなエピソードもてんこ盛り(?)で、日本語だったら徹夜で読み切ってしまいそうな本なんですが、英語なのがつくづく恨めしい。著者は英語教師だそうで、カッシングの自伝と比べるとはるかに読みやすい文章ではありますが。
(カッシングの自伝は、世代のせいか個性なのか、古い言い回しや文法が普通でない文章がけっこう出てくるので、自分の英語レベルでは「解読」にえらく時間がかかるんです…(^ ^;))
どこかで翻訳出してくれないかな。ほんとに!

ホラー映画関係の書籍というと、なぜか「日本のマニアさんが作品や撮影秘話を紹介・解説する」みたいな、ワンクッション置いたものが多いんですよね。それも『BSマンガ夜話』的なノリでは面白いんですが、情報に関してはどうしても孫引き感があるし、解説者の趣味のバイアスがかかってしまうんですよね。もっとこういう直接取材したものや、一時資料に近いものの翻訳書も出してほしい!・・・うーん、需要が少ないのはわかってるけど、日本語版Kindleが出て、本家並みに電子出版の敷居を下げてくれるとしたら、できるのでは!?(あ、翻訳書は別でしたっけ…?)

2010年10月5日火曜日

『ブラッディ ドクター・ローレンスの悲劇』(1974)

 

ブラッディ ドクター・ローレンスの悲劇 [DVD] (2010/3/28に、DVDが国内初リリースになったときの感想です。レビューなんかではわりと叩かれることもある作品ですが(笑)、個人的には、カッシングがナイーブな面を強調して演じるのを堪能できて、大変気に入っています。初見ではちょっとショックだったのもたしかですが・・・詳しくは本文をご覧ください。ホラーファンというよりカッシングファンの未見の方には、「だまされたと思って見てみて!」とおすすめしたい一本です♪)


ピーター・カッシング「ニューリリース」(ここがうれしい(笑))DVD、『ブラッディ ドクター・ローレンスの悲劇 』、さっそく鑑賞いたしました♪(原題は『Night of the Ghoul』。邦題タイトルには枕詞的に『ピーター・カッシングのグール』とついています。グールは人食い鬼的な怪物のことらしいです)

まずジャケット写真があきらかにキャプチャー画像なのを見て「・・・ワンコイン並のクオリティ?」と覚悟。・・・中身の映像もまさにそうでした(笑)。
まあそれはともかく、作品としては…かなり覚悟をして見たせいか、意外にも退屈する箇所なしで大いに満足。買ってよかったです!なんせカッシング作品では『デビルズ・ビレッジ/魔神のいけにえ』みたいな極北トホホ作品を見てますから、「アレに比べたらぜんぜんまとも!」というへんな基準が…(悪食になじみすぎました…そろそろまともなエンターテインメント見ないと!(^ ^;))

まあそれはともかく、 デビルズ・ビレッジを引き合いに出す必要はない作品でした。ほんとに。74年作品でカッシングの演技も美貌もすばらしく、設定もおいしいし、あと美術がけっこういいです!

・・・ストーリーのほうから行きますと、時代設定はたぶん第一次大戦後くらい?金持ち坊ちゃんや嬢ちゃんたちがパーティーをしていて、余興で肝試しをしたりしています。で、車(ハンドルを回してエンジンをかけるクラシックカー)で競争することになり、おきゃんなヒロインがガス欠と霧のため立ち往生。謎めいたドクター・ローレンスの屋敷に迷い込み、恐ろしい目に遭うことに・・・。

ドクター・ローレンスがもちろんカッシング丈。ヒロインがベロニカ・カールソン。(『フランケンシュタイン・恐怖の生体実験』でもカッシング演じるフランケンと共演してました)ローレンスの庭番で毛皮フェチの変質者っぽい若者に、若かりしジョン・ハート!(大好きなんです!なんて贅沢なキャスト!(笑))

あと、もう一人引き立て役っぽく出てくる女の子をやってた人は、なんとなく『ツインピークス』でローラ・パーマーのお母さんをやってた人に似てました。(74年にこの程度の若さ・・・なのでご本人かと思ったんですが、確認したら別の人でした)ヒーローっぽい元将校の男の人は、しゃべり方含めてなんとなく「さえないコリン・ファース」という感じ。(笑)

まずカッシング鑑賞目線ですごくショッキングだったことが・・・。主人公は妻を亡くしているのですが、その「死んだ妻の写真」が、カッシング丈の実際の奥様、ヘレンさんの写真なんです。自伝にもドーンと載っている、若い頃のすごく美しい横顔のものなんですが・・・この写真が、けっこう重要な小道具として何度も映されるんです。う、うわー・・・。(^ ^;)

・・・映画が作られたのは、実際の奥様が亡くなってから三年くらい後です。この写真が出てきたらもう、なんだか主人公とカッシング自身があまりにオーバーラップしてしまって、痛ましいを通り越してゾッとしてしまいました・・・。

小道具を自分で工夫して用意する、という話はあちこちで聞いてましたが…こういうことするか普通?私だったら、「連れ合いが死んだ役を、実際の死んだ連れ合いの写真を見ながら演じる」なんて、逆に辛くて絶対できない!と思うのですが・・・。愛妻家というよりオブセッションの域に見えて、映画と同時進行で「死んだ妻の面影にとりつかれた老俳優」のホラー映画が脳内で完成してしまいました・・・。(私生活にまでホラー味の色眼鏡が・・・(^ ^;))

邦題通り、ローレンスは悲劇的な末路を迎えます。そのラストシーンにも、この写真が重要な小道具として一緒に映っているのです・・・。なんか・・・なんか映画そのものに対してより、そのオーバーラップに対してたまらなくなってしまいました。すごく怖くて悲しい。いけないものを見てしまったような感覚に陥りました。しかも絵面として、ある意味すごく美しいシーンだけに・・・。

自伝を読みだした直後ということもあり、過剰反応だとは思いますが、そのへんを抜かしての感想・・・というのは、今はショックが残っててちょっと難しいです。でもカッシングの演技はたしかに「いつも通り」すばらしかったです。

ネタバレを避けると書けませんが、すごく重い葛藤を抱えているキャラクターで(まあ、ローレンスが家族に起こった過去の事件をほのめかすあたりで察しがついてしまいますが・・・)、カッシング鑑賞ビデオとしては見所いっぱいです。

舞台が『バスカヴィル家の犬』のダートムアみたいな沼地で、カッシングがあの素敵に節ばった長い指でバイオリンを弾く姿まで拝めて(あきらかに弾いてないですが(笑))…イギリスではホームズ役で人気だったことを考えると、ちょっとしたサービスかも。ホームズファンとしても嬉しいオマケでした。

ジャケットに「ゴシック・ホラー」と書いてありますが、まさにゴシック・ホラー・・・ゴシック風の館で美女が恐ろしい目に遭うという定石を守った作品で、重要な要素である「ゴシック」の雰囲気・・・これがきっちり出ていました。さきほども書きましたが、ほんとに美術がすばらしいです。お金がかかっているようには見えませんが、ムードを描くうえで充分すぎるほど。

出てくるゴシック屋敷はすごく古そうな、雰囲気のあるセットだし、要所要所においてある装飾品は、設定(ローレンスは昔牧師としてインドで活動していた)に関連してインドものが置かれ、エキゾチックにひとひねり。悲劇的なラストシーンにも、エドマンド・バークが言う「崇高な」美しさと、ある意味キッチュな異国趣味とが絡み合っていて、なかなか正統なゴシック・ホラー作品、といえるかもしれません。

(ただし、ローレンスの「秘密」にまつわるインドの扱いはアレですが・・・やっぱ「東洋の奇怪な風習」でなんでも片づけられるものなのか!?(笑))

・・・美術があまりによかったので、さっきスタッフロールを確認しようと拾い見して気づいたのですが・・・なんと最初のタイトル部分がない!?本編の前に、「制作国米国に現存するマスターを使用しているため、ノイズ等があるけど商品の不良じゃないので許してね」みたいな注意書きが出るのですが・・・この程度のフィルムしか残ってないということなのかしら。これはハマーやアミカスじゃなくて、タイバーンフィルムという、やはりホラーで名前を聞いた会社の作品なのですが・・・イギリスじゃなくてアメリカなのかな・・・?でも「タイバーン」て、たしか昔ロンドンの処刑場があった場所の名前ですよね。うーん・・・?

まあとにかく拾いものでした。
監督はハマープロでも活躍したフレディ・フランシス。(ちなみに制作は彼の息子のケヴィン・フランシス。家族制作だったのか…)フレディ・フランシスはハマー映画などで監督をしたあと、後年は撮影技術のほうの専門家になったそうで、『グローリー』などでアカデミー撮影賞を受賞しています。たしかハマーのドキュメンタリーでも、監督としてビジュアルへのこだわりを語っていた方でした。

ストーリーの根本的なところでアレな部分があるのに、パーツごとに見ていくとちゃんとしてる・・・というか、ある意味アンバランスに「濃い」。これはハマーの怪奇映画からの伝統なのかな?なんて思いました。(笑)

2010年10月2日土曜日

カッシングの声でなごむ♪/自伝朗読CD

 

Peter Cushing: Past Forgetting (2010年7月にCDが発売になったときの感想です)

予約していたピーター・カッシングの自伝朗読CD、Peter Cushing: Past Forgetting が一昨日届きました♪
88年にカセットで出た音源の初CD化だそうです。亡くなる直前に収録された『ハマー ホラー&SF映画大全』のナレーションほど声がいがらっぽくはなく、緩急がついてて芝居っ気たっぷりです。
以前本のほうは買ったので、聞きながら目で追ってるのですが・・・うう、それでもけっこう追いつけません。もう、声を愛でるのに徹しますかね。(^ ^;)

数少ないついていけた部分で、面白いところがありました。出た映画のなかで、どういうふうに死んだか、あるいは殺されたかをご自分でリストアップしているところです。なんせ数え切れないほど死んでらっしゃる(笑)うえに、出てるのがほとんどホラーですから、これがもう笑えるの何の!最後に「・・・もっとラクな生計の立て方ってなかったんだろうか・・・?」とユーモラスに結んでいるのもおかしいです。

CDは二枚組で、CD化にあたっての特典ドキュメンタリー音源というのも収録されてます。(まだ聴いていませんが)ケースのディスク留め部分がすごくきつくて、最初取り出すときディスクが折れるんじゃないかと冷や汗かきました。でもきれいなデザインのCDです。聴き流すのはやっぱりもったいないので、少しずつ本を見ながら聴いていこうと思います。ちょっと精神力のいることが立て続けなので、こういうなごみがあるとありがたい…早く届いてくれてありがとう!寝る前に聴けば、すこぶるベッピンなおじいちゃんに本を読んでもらってる孫(?)の気分でいい夢見られるかも♪(笑)