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2010年12月20日月曜日

『地底王国』(1976)

 やっとリアルタイムの記事になりました。(^^;)

二日早く着いたDVDを、昨夜堪能しました♪前にVHSで見たときは、着ぐるみの鳥人間にがっくりきてしまって(笑)ところどころ早送りしたのですが、今回は覚悟ができておりましたので、ちゃんと見ました。
ああ、ピーター・カッシングのアブナー・ペリー博士

あまりにラブリーすぎ!(笑)

これがあのクール・ビューティー、モフ・ターキンと同時期の姿とは…。ギャップ好きにはたまりません♪

原作はエドガー・ライス・バロウズのSF小説で、舞台は19世紀…だと思います。アイアンモールという、先端にドリルのついたジェットモグラもどきに乗って、メカの設計者アブナー・ペリー博士と出資者のデビッド・イネスが地下世界に行くお話です。デビッドがダグ・マクルーア、ペリー博士がカッシング。鳥人間に支配された地下世界の元王女様が、ボンドガールでハマー映画出身のキャロライン・マンローです。

主演がアメリカ人のマクルーアなので、対比を出すためか、カッシングの口調はいつもよりイギリス発音が強調されていて、いかにも「戯画化された愉快な英国紳士」です。扮装、身のこなし、表情の豊かさ…と、見事にマンガチック!この方がコミックリリーフというのは珍しいですが、ハマってます!ドクター・フーのときの雰囲気をさらに誇張した感じで、見ていて頬がゆるみました。(笑)
オープニングの、建造中のアイアンモールの横で設計図を見る姿は、なんとなくタンタンシリーズに出てくるビーカー教授を連想させます。帽子とコート、メガネに口ひげと、とぼけた感じが…。

メカは外観と操縦席しか出てきませんが、チープながらレトロでいい感じなので、地底世界に着くまでのシークエンスが楽しくて好きです。(カッシングのアップがたくさんあるというのもポイントかも…(笑))
ラストの雰囲気では、デビッドとペリーの冒険は続きそうなのですが…(そういえば、ペリーは途中でデビッドに「月に行きたいと思ったことないかね?」とか聞いてました。それどころじゃない状況だったので無視されてましたが(笑))
原作があるかどうかは関係なく、この二人の冒険ものをシリーズ化してくれたらよかったのに…。カッシングのペリー博士、もっと見てみたかったです。「アレ~、タ~スケテ~~」てな状況になってはデビッドに助けられる、というお約束なところがまたおいしくて…。(これでダグ・マクルーアが好みのタイプだったら萌えまくるところです!(笑))

作品としてはお子ちゃま映画なんですが、カッシングもわりと出ずっぱりですし、(途中デビッドと別行動になるところではしばらく姿が見られず、退屈しましたが)珍しいコメディー演技とかわいさ満点で大満足。なんだかえらくなごみました。(笑)

商品としての希望を言わせていただくと、英語字幕もあったらよかったなあ…と。日本語字幕に反映できない部分で、ペリー博士はいかにも英国紳士っぽいギャグ(?)を随所で言ってるみたいなのです。悪い原住民(笑)と戦うデビッドに「クインズベリ・ルールなんか気にせんでいいぞ!」とか。(たしかクインズベリ卿という人が、イギリスでボクシングのちゃんとしたルールを決めたそうで、それ以前はもっと荒っぽいものだったらしいんですね。つまり「品よく戦う必要ないぞ」みたいな台詞。もちろんデビッドは手加減なんかしてない状況ですので、このへんも絶妙なギャグです♪)
聞き取りが心もとないので、英語字幕があったら確認できるのになあ…と。
日本語吹き替え音源にこだわりのあるレーベルさんみたいなので、そちらに力が入ってるのかもしれませんが…けっこう楽しめただけに、ちょっぴり欲が出てしまいました。

2010年12月17日金曜日

『フランケンシュタインと地獄の怪物』(1972)

 

フランケンシュタインと地獄の怪物 [DVD](4月にDVDを購入したときの感想を少々推敲したものです)


ピーター・カッシングのフランケンシリーズ最後の作品で、1972年の映画です。(映画データサイトでは1974年なのですが、カッシングの自伝では72年となっているのです。撮影72年、公開74年、なのかな?)解説によると、監督のテレンス・フィッシャーの最後の作品で、ハマープロの最後のゴシックホラーでもあるそうです。(個人的には、これまでに見たハマー映画で面白かったものの多くがこの監督の作品です)

これまでなかなか買う気になれなかったのは、フランケン男爵の扮装が・・・いまいちアレなためです。(笑)ハマー映画のドキュメンタリー『ハマー ホラー&SF映画大全 』でも、カッシング自身のナレーションで「クルクルのカツラを着けさせられ、その姿はまるでヘレン・ヘイズ」とまで言われております(笑)。

ヘレン・ヘイズは・・・私は『大空港』での無銭機乗常習犯の愉快なおばあちゃんしか覚えがないのですが、『・・・地獄の怪物』での男爵のルックスはまさに「おばあちゃん」です(笑)。細面で神経質そうで、ヘイズとはまるで違うように見えますが、引き合いに出されたのはたぶんこの「おばあちゃんぽさ」を指すためかと。

さて、今回の舞台は精神病院です。(といっても、セットのイメージはゴシックな監獄です)男爵に憧れて例の死体ツギハギ実験を自分なりにやっていた青年が、妖術使いの罪で逮捕され、精神病院に入れられます。彼が参照している、男爵の著作がすてきです。表紙には男爵の似顔絵いり!ちょっとダ・ヴィンチの素描みたいな、解剖状態でかっこいいポーズをとった人体が、ゴシック調のデコラティブなバックに描かれています。・・・美しい。これほしい・・・(笑)。

その青年は院内で、なんと死んだはずの男爵が、オシャレなヘアスタイルで(笑)医師として勤務(?)しているのを知ります。男爵はカール・ヴィクターと名前を変え、いわくつきの院長を威圧して、事実上院内を仕切っております。
院長を演じているのは、たしか『謎の円盤UFO』でテレパシー能力者を演じた方だと思います。いつも冷や汗かいて緊張している役なので、演技的にもデジャヴが(笑)。

男爵に心酔している青年は、さっそく助手に志願。もちろん例の実験も・・・そしてやっぱり人造人間(これが「地獄の怪物」。デザインあんまりやん!)が完成して・・・ラストはちょっと、男爵にぞっとします。ちょっとですけど(笑)。オチの感触は、やはりカッシングも出演した、精神病院が舞台のオムニバスホラー『アサイラム』と似ていました。結末というより、「オチ」という感じです。ここで精神病院という舞台が活きました。

青年役のシェーン・ブライアントという方がなかなかのブロンド美青年で、若いのに演技も落ち着いていました。どこかで見た顔だと思ったら、ドラマで『ドリアン・グレイの肖像』のドリアンをやったことがあるらしいです。私が顔を覚えているということは、もしかしたらジェレミー・ブレットが画家役をやったときのドリアンではないかと。(ドラマ自体はYoutubeでチラ見した程度なのですが、なんとなく見覚えが・・・)ブレットがドリアン役をやった昔の作品というのが見たかったので、このバージョンは興味が劣ったのですが、この方のドリアンくんなら、ダークサイドもうまく表現してくれてるに違いないです。きちんと見てみたくなりました。

そして「地獄の怪物」役が、なんと数年後に『スター・ウォーズ』ダース・ベイダーをやるデビッド・プラウズ。つまり男爵と怪物のツーショットは、モフ・ターキンベイダーなんですね!きゃ♪(ターキン&ベイダーも、一時期脳内でやおい候補になっていたので、なんとなく萌えます。いや、やおいは必然的にギャグにしかならなかったんですけど・・・(笑))

それにしてもカッシングのガリガリなこと・・・衣装も細さを強調してしまうデザインだったので、ほんとに骨と皮って感じです。それでも自分でスタントをこなしてるので、なんか内容とは関係なく「骨折れるんじゃないか~?」とハラハラしました。暴れ出した怪物の背中に机から飛び乗り、麻酔薬をしみこませた上着で怪物の頭を覆い、そのまま一緒に床に倒れ込むというアクションなのですが・・・顔が映ったままの1カット撮りなので、ごまかしようもありません。ほんとにご本人でした。封入されてた解説文によると、カットの声と同時にスタッフが拍手喝采し、怪物役のデビッド・プラウズは感動して涙をこぼしたとのこと。いやはや、映像で見てても、「こ、こんな細っこいおじいさんがよくぞっ!」と拍手してあげたくなりました。当時58歳ということなので、今の感覚だとべつに「おじいさん」じゃないんですがねえ・・・。(笑)

・・・その解説文に、やはり71年に奥様ヘレンさんが亡くなって、急に痩せて老け込んだため周囲が心配した、というお話が載っておりました。一時は自殺まで考えた、というのは、当然そうだろうとは思っていましたが…文章でそう読んだのは初めてです。キリスト教徒なので思いとどまったというのも妄想どおりです…。
(※追記 秋に作ったカッシング/リーの同人誌がそういうイメージから発想したもので、このときちょうど書いていた頃なので、こんなことを書いています)

この作品は72年で復帰した直後の時期ですから、そのへんのいきさつもあって、健気にアクションをこなす姿が周りの感動を誘ったのかもしれませんですね。…衣装のせいもあるでしょうが、他の作品より痩せ具合が際立って見えて、顔も一段と細くて、正直「当時はこんなにやつれてたのか」と、ちょっとショックでした。1~2年後の作品のほうが、少し若返って見えるくらいです。

(自伝には、奥様は闘病中6ストーン(約38kg)も痩せ、カッシング自身も3ストーン(約19kg)痩せたと書かれていました。20kg近く減ったのでは、人相も変わるわけですね。70年代頃のカッシングのルックスが好きな自分には、ちょっと複雑な感じがする情報でした…)

映画自体としては、やはり斜陽の感は否めません。やつれたカッシングからピチピチのイケメンに世代交代させて、シリーズを生き返らせたかったのかな…という印象も受けました。テレンス・フィッシャー作品のなかでは、『フランケンシュタイン 恐怖の生体実験 』がぶっちぎりで好きなのですが、それと比べてしまうと説得力や力強さ、演出の点でもやはり見劣りがします。なにかストーリーがホイホイ流れていってしまう感じがありました。

そういう安っぽさはあるものの、キャラクターの行動にちゃんと血が通っている「映画」的な行儀のよさは、その後のスプラッターなどがウリのB級ホラーとは異質です。解説には、ハマーの最盛期と比べれば劣るものの、当時の他社のホラーの大多数より優れていると書かれています。同年代のホラーって良く知りませんが、たしかにある種の格は感じました「ゴシック」という題材の普遍的な魅力も大きいと思います。

・・・とにかく、これで現在国内でDVDが出ているカッシングのフランケンは、すべて見終わってしまいました。あとは、来年リリース予定の『フランケンシュタインの怒り』を待つばかりでございます。

2010年12月9日木曜日

『地底王国』DVDの予約受付が始まってます♪

 ちょっと遅くなりましたが、今月21日に発売予定の『地底王国』DVDのレーベルサイトで、1日から予約受付が始まっております。自分もさっそく予約しました♪

→allcinema SELECTION

ここのツイッターによると、当初は同じダグ・マクルーア主演の怪獣映画『アトランティス七つの海底都市』とセットで商品化する予定だったとのことで、オマケの怪獣カードまでデザインしていたのに…と、残念そうなツイートなのですが…。

正直、個人的には別々でよかった!(笑)
目的がダグ・マクルーアでも怪獣でもなくて、ピーター・カッシングですから。はい。(^ ^;)
どうせなら、来年出る『吸血鬼ドラキュラの花嫁』カッシング・セットにしていただいて、特典にカッシング・カードなんかつけていただけたら、もっと幸せになれるのですが…。(笑) 

虚しい冗談はともかく、発売が楽しみです♪

2010年12月4日土曜日

BBC版シャーロック・ホームズ その3 さまざまなゲスト

 

bbcholmes.jpgピーター・カッシングのBBC版ホームズ、5本すべて見終わってしまいました。ああ、これしかないなんて。
鑑賞一本目だった『緋色の研究』エド・ビショップが出ていたことはすでに書きましたが、ほかのエピソードにも『謎の円盤UFO』などで見た顔がいろいろ出てきて、へんなところで「おなじみさん」を見る楽しさがありました。

まず、『バスカヴィル家の犬』のヘンリー・バスカヴィル…目がやたらきらきらしているのが印象的で、絶対チープな宇宙服姿で見た顔だぞ!と思ったんですが、役が思い出せませんでした。…ネットで調べたところ、やはり『UFO』にゲスト出演していました。(あー、スッキリした!(笑))あと、『四つの署名』にアセルニー・ジョーンズという警部が出てくるんですが、これがまたもや『UFO』キャストで、『超能力!UFO探知人間』のタイトルロールの超能力者をやってた方でした。

この方、ちょっと前に見た『フランケンシュタインと地獄の怪物』でも精神病院の院長役で出ていたので、カッシングとの立場の変わった共演がおもしろかったです。今回の警部役では髭を生やし、わりと尊大な態度もとる役なのですが、その分声がいいのを初めて知りました。すごく響きのいい、美声でした♪舞台とかで映えそう。考えてみたら、このホームズは1968年、『UFO』は1970年頃ですから、ほとんど同じ頃のテレビ作品なんですね。当時イギリスのテレビで活躍していた俳優さんがダブって出ているのはあたりまえかも。

特筆もので驚いたのが、『青い紅玉』でした。これはクリスマスのお話で、カッシングのシリーズの最後に、実際にクリスマスシーズンに放映されたようです。クリスマスのごちそう用のがちょうの体内から、盗まれた宝石が出てきて…というお話。ラストが大岡裁き(?)で、クリスマスらしい後味の作品です。
このお話で、偶然落とし物のがちょうを拾う、ピータースンというコミッショネアに見覚えが…。なんとなんと、グラナダ版ホームズの同じ『青い紅玉』で、がちょうを落としたヘンリー・ベイカーというおじさんをやってた方でした!!!もちろんグラナダ版があとに作られたので、自分は逆の見方をしてるわけですが、もうびっくり!同時に、意識してなされたことかどうかはわかりませんが、「グラナダ版)粋なことしてくれるなあ!」と嬉しくなりました。

このBBC版のホームズは1968年の9月から12月まで、週一回放映された番組らしいのですが(正確にはこのクールが「シーズン2」で、「シーズン1」でホームズを演じた方がシーズン2への出演を拒否したため、巡り巡ってカッシングに役が回ってきたそうです)、グラナダ版が作られるまではドラマ版ホームズの決定版、みたいなお墨付きをもらっていたほど人気だったそうで、カッシングの自伝やインタビューを読んでいても、「フランケンシュタインやヴァン・ヘルシングのほうがよっぽど何度も演じているのに、いまだにホームズのイメージで見られる」というようなことを言っています。イギリスではよほど何度も再放送したのか、一般的なカッシングのイメージになっていたようです。(東野英治郎といえば水戸黄門、みたいな?古い例で恐縮です…(^^;))

…それくらいイメージが定着していたシリーズなら、グラナダ版の『青い紅玉』を見た当時のイギリス人・・・とくにホームズファンの人たちは、かつてピータースンを演じた同じ役者がヘンリー・ベイカーを演じるのを見て、私とは逆の感慨があったのでは。

…この俳優さん、フランク・ミドルマスさんというのですが、調べてみたら生涯独身で、40年間、同じく俳優のジェフリー・トーンという方(クリストファー・リーより長身の197センチ!)と家をシェアしていた…とのこと。
腐女子脳で「すわ、ゲイ!?」と悪い癖が出たのですが…IMdbでは記述がなかったものの、英文のWikipediaでは、ちゃんと「Gay Actor」にカテゴライズされてました。
あらまあ、またヘンな株が上昇してしまいましたよ~♪(笑)。

…まあそれはともかく、この方はハマー映画の『フランケンシュタイン・恐怖の生体実験』などでも脇役でちらちら見かける方なので、そっちの意味でもカッシングのホームズと並べて見るのは楽しかったです♪

ひとつひとつのエピソードについて感想を書くとえらく長くなりそうなので、これはやはり、できれば同人誌にしたいです。(^^;)…ほんとにつくづく、字幕のついたDVDを国内で出してほしいです…。せっかく人気俳優のホームズ映画が封切られて盛り上がってるんですから、どうせなら便乗(?)して出してくれませんかね。(笑)

   *   *   *   *   *   *

5本のなかでもとくにおもしろいと感じるところがあるのですが、そのどこがおもしろいかと言うと、ワトスンとホームズのやりとりなんです。特に『ボスコム谷の惨劇』のやりとりはおもしろくて、「こんなにおもしろいシーンあったっけ?」と原作をカンニングしたら、原作にはそんなシーンはないんです…台詞が聞き取れない部分があってくやしい!とにかくこの二人の会話のテンポがたまりません。ホームズが説明なしに先走って、ワトスンが「えっ…?」と当惑する一瞬とかが、とくにたまりません(笑)。

聞き取れた部分だけ、ちょっと意訳でご紹介しますね。『ボスコム谷の惨劇』の1シーンです。沼地で息子が父親を殺した、という事件なのですが、ホームズは息子の潔白を証明しようとします。

殺人現場にやってきたホームズは、かたわらのワトスンをほったらかしたまま、地面を這い回ったり、ワトスンを木の陰に立たせて離れて見て、一人で満足そうに「Ah!」と言って手を打ったりしています。ワトスンはわけがわかりませんが、調査の邪魔はするまいと黙っています。ホームズは漬け物石くらいの石を拾い上げ、観察したあと無言でワトスンに渡します。ワトスンわけがわからず。

ワトスン: 「…それで?」

ホームズ: (たった今ワトスンの存在に気づいた、という感じで)「ああ、ワトスン!」
      (石を指して)「その石を大事に持っていてくれたまえ」

ワトスン: 「…なんのために?」

ホームズ: 「それが凶器なんだよ」

ワトスン、驚いたあと、持った石を見る。(目つきがいいです。やりすぎなくて(笑))
ホームズ、地面を見ながらあたりを歩き回り、くるりと回ってしゃがんだ姿勢で体を前後に揺らす。(すごくかわいいです!)

ホームズ: 「それから…びっこを引く男を見つけなくちゃ!」

と、まじめくさった顔でワトスンを見るホームズ。
ワトスンわけがわからず当惑顔。

…いや、文章ではこのユーモラスな感じは再現できませんですね。字幕入りが出て、日本全国津々浦々のレンタル屋に常備されてほしいっ!

…余談ですが、イギリスではほとんどの人がカッシングの若い頃の姿をテレビで「つい最近」見ていたため、年をとったご本人に「…ひょっとして、ピーター・カッシングのお父上では?」と声をかける人がいた…というのが、トーク番組などでのカッシングの持ちネタになっていたようです。何度か目にしました。さらに晩年になると、老けすぎて本人だと言っても信じてもらえないので(笑)、「ピーター・カッシングの祖父です」と名乗ったというジョークも出てきました。

晩年にも一度、『The Masks of Death』というタイトルの(ドイルの原作によらない)単発ドラマでホームズを演じたらしいのですが、これは海外でもVHSしか出ていないようです。自伝に写真は載ってるのですが…。老けにあわせた、いったん引退したあとのホームズという設定らしいです。見てみたいです…。

2010年11月27日土曜日

BBC版シャーロック・ホームズ その2/コナン・ドイルの声

 

bbcholmes.jpgBBCテレビドラマ版・ピーター・カッシングのホームズを、ちょびちょび見ております・・・って、5本しかないので、もうあと1本しか残ってません。テレビのテンポに慣れてきたのか、すごくおもしろくなってきたんですが・・・ああ、5本しか残ってないなんて!16本全部見たい~~~っ!!!

これまでに見たのは『緋色の研究』、『バスカヴィル家の犬』、『ボスコム谷の惨劇』、『四つの署名』の4本。バスカヴィルはハマーフィルムの劇場版ホームズ(やはりカッシングがホームズ役)と同じ原作なのですが、ハマーのほうはホラーテイストで脚色されていたので、ちょっと比較しにくいです。なにより、ハマー版のほうはヘンリー・バスカヴィル(莫大な遺産を相続して、命を狙われる若い紳士)をクリストファー・リーが演じてまして、どーしても「ヘンリー卿とホームズ」に注目してしまうため、(一緒に出てくる場面なんて数えるほどですけど!)かなり不純な感想しか抱けなかったのもあり…(笑)。

今回、ナイジェル・ストックのワトスンがけっこう好きになったので(かわいいんですよ~~~♪)、ホームズの出番が少ないバスカヴィルもかなり楽しめたのですが…とりあえず、カッシングのホームズものをテーマに一冊作るしかないかと!? (またやるのか、国内盤DVD出てない作品で同人誌!サッパリ売れない同人誌!(笑))

…各々のエピソードの感想はまた改めて書くとして・・・昨夜見たドキュメンタリー、特典で入っていた『Sherlock Holmes: The Great Detective Documentary』が、ものすごいお宝映像満載でした!カッシングのホームズではなく、シャーロック・ホームズそのものについてのドキュメンタリーなんですが…なんと、コナン・ドイル本人の映像が…動いてるドイルせんせを見るのも初めて(たぶん)ならば、声を聴くのも初めてでした!なんか口をあんぐり開けてしまいました!こんな貴重なものをあっさり!!…晩年のものだと思いますが、声はわりと高めというか…年とってからのクリストファー・プラマーの声とちょっと似ていると思いました。

ドキュメンタリー自体の作りも自分にはお宝で、ロンドンのSherlock Holmes Societyというファン団体のホームズ誕生日のディナーに、ワトスンが招かれて思い出話を披露する、という微笑ましい趣向です。そこでワトスンを演じているのが…なんとジェレミー・ブレットのグラナダ版ホームズでワトスンを演じたデビッド・バーク!!!…個人的には、「ワトスン好き」になったきっかけが、この方のワトスンなんです。ハンサムで誠実で行動的で、でもホームズと比べるとちょっぴり抜けていて、憎めない素敵なワトスン♪(それがなんでチョロQになってしまったのか、自分でも謎です(^ ^;))

お顔の老け具合から、収録されたのはグラナダ版が終了してからそんなに経ってない頃ではないかと思います。途中で挿入されるドラマシーンもグラナダ版のもので、このBBC版よりグラナダ版DVDの特典につけたほうがいいのでは、と思われる内容なのですが…とにかくまったく期待していなかったので、あまりの貴重な映像にびっくりです!

ほかにもピンカートン本人の写真とか(アメリカのピンカートン探偵社の実在の創立者。時代が近いので、パロディーなんかでも言及されることがあるようです。ホームズそのものにも名前は出てきたかも…ちょっとうろ覚えですが…)、ワトスンがホームズとの同居を世話してもらうきっかけになったクライテリオン・バーの写真とか(あれ、入ってない?前に立ってただけだったかな?(^ ^;)…とにかく出てくるのです)、当時のロンドンの様子とか…まあ、ホームズ関連の本をいくつか読めば、写真ではお目にかかれるものばかりですが、ところどころに動く映像があったりするのが、すごく自分としては貴重でした。なんというか、当時の空気感?みたいなものが感じられて…。

…エンディングは、医療かばんを持ったワトスンの扮装のままのデビッド・バークが、かたわらを自動車が走っている現代の道路を歩いて去っていく…という洒落たものでした。遠景にビッグ・ベン。パチパチ(拍手)。…とうとうカッシングについてはまったく出てこなかった(笑)ドキュメンタリーでしたがこんな貴重映像を特典で入れてくれてありがとう。でもますます字幕入りで見たくなったぞ!国内のDVD会社さん、どーかお願いします、コレ字幕入りで出してくれませんかっ!!!

    *   *   *

日本のAmazonでは扱いがないのですが(以前に出たバラ売りのものはマーケット・プレイス扱いで載っていますが、特典のドキュメンタりーはついてないのではないかと・・・)[追記:bloggerへの転載時にはAmazon日本ストアでの扱いがありましたので、文頭画像にリンクを追加しています、ご興味がわいた方のために、販売サイトの該当ページにリンク貼っておきますね。(アフィリエイトではありませんです(笑))

ここは自分が何度か利用しているので、日本語対応可でいちおう安心できます。ほかの海外DVDを扱っているお店でも入手可能だと思います。ただ、リージョン1なのと、字幕は英語字幕もついてないので、そのへんはご注意ください。

DVD Fantasium "The Sherlock Holmes Collection"へのリンク

追記・アメリカのAmazonでは売ってました。こちらのほうが安いかもしれません。
Amazon.com ”The Sherlock Holmes Collection”へのリンク

2010年11月20日土曜日

BBC版シャーロック・ホームズ『Study in Scarlet』(1968)

 

bbcholmes.jpg(日本ではDVDが発売されてないんですが、カッシングがホームズを演じたBBCテレビシリーズのうち、現存している5本がパックされた『The Sherlock Holmes Collection』より、『Study in Scarlet』(緋色の研究)の感想です)

このコレクションに入っているのは「生き残った」5本なんですが、調べたところ全部で16本制作されたとのこと。残りのフィルムは紛失してしまったんですかね…なんと惜しい。

ディスクの収録は放映順ではないのですが、いちおう放映の早い順に見てみることにしました。まずは『Study in Scarlet』(緋色の研究)。1エピソード48分のドラマです。字幕は英語もついてないんですが、ホームズはいちおう話はわかるのでなんとか。

まず…本編とは関係ないんですが、オープニングのカッシングがかっこいい!ディアストーカーをかぶった横向きのシルエットから始まって、照明がついてこちらを向き、キョロキョロ目を動かして(この動作が何となくホームズっぽい♪)観音開きの窓を開ける…というだけなんですが。きびきびしてていい感じです。今見るとちょっと古風な表現ですが、そこがまたいい。(…いや、書いてみると大したことないですね。もう今惚れまくってますから針小棒大に喜んでます。すいません(^ ^;)))

ストーリーはまあ、ホームズなので省きますが、冒頭から驚きのお年玉(?)が!エド・ビショップ!『謎の円盤UFO』ストレイカー司令官をやった、エド・ビショップが出てたんです!…そういえばUFOハマリ度の深かったとき、ビショップのフィルモグラフィーにホームズへのゲスト出演があるのを見て、見たいなあ、と思った覚えが。まさかカッシングのホームズだったとは!…役はスタンガソンなので、脇役もいいとこですが…いや、もうこれ自分にはお宝ディスクになりました!

で、肝心のホームズ。…このエピソードは原作でも最初のもので、ホームズとワトスンの出会いから描かれる作品なのですが、ドラマではすでに同居(笑)しています。朝食のテーブルからご登場です。ワトスンとの掛け合いのテンポがいいです♪このワトスン好きだ…♪(笑)演じているのはナイジェル・ストックという方です。

ホームズはしばらくおもしろい事件にかかわっていないらしく、「ロンドンはつまらない街になった」とおなじみのボヤキが。ワトスンが雑誌の記事につっこみを入れて、それに反駁したホームズが「その記事を書いたのは僕さ」という例のシーンが演じられますが、ホームズは倦怠の演技でスルーする感じ。ユーモラスです。「現在興味があること」以外はどうでもいい、という性分を強調している感じ。

ジェレミー・ブレットのホームズだったら…と、ちょっと想像してしまいました。こういうときちょっと皮肉に口の端を持ち上げて、嬉しそうな顔をしてくれそうな気がする…。横目でワトスンを見たりして。勝手なイメージですが(^ ^;)。(グラナダ版にこのやりとりってあったかな…?)
俳優さんの解釈と個性によって、同じキャラでも表現が変わるもんだなあ、と思いました。もちろん脚本によりますけれど。…それによってワトスンのリアクションも変わって、二人の関係もそれぞれに個性のあるものになるんですね♪

…全体に関していえば、やはりテレビというか、スタジオ収録と屋外ロケの部分で露骨に映像の肌理が違うんですね。この時代のテレビドラマはまあ、こういうものなんでしょうね。カッシングはわりと美術のいい映画でばっかり見てきたので、テレビドラマで見るとうごく紙芝居みたいな印象はあります。意識したことなかったけれど、ちがうものですね。

でもやはり、きびきびしたホームズ姿とリズムのいい台詞回しはたまりません♪他のも見るのが楽しみです♪


2010年11月14日日曜日

『地底王国』DVD発売延期と原作

 サイトのカッシングコーナーですでに書いたのですが、いちおう…。

十一月発売予定とアナウンスされていた『地底王国』が、来月発売に延期されました。うーん、じつはこのブログに転載できる記事も残り少なくなってきたので、いいタイミングでリアルタイムの感想文にシフトできるかな…なんて思ってたんですけど(^ ^;)。ま、2回も延期になって、これで決定だそうなので、とにかく楽しみです♪

↓発売元サイトの紹介ページはこちらです。
allcinema CELECTION DVD『』 
http://www.allcinema.net/dvd/atec.html

自分はレンタルのVHSで見たきりなんですが…
内容は自家製ジェットモグラ(?)で地中に潜って、着ぐるみの鳥人間に支配されている世界を探検して、筋肉マン(ダグ・マクルーア)が露出度の高い美女(キャロライン・マンロー)を救ったりする他愛無いもの(笑)。着ぐるみもチープで笑えるんですが、筋肉マンと同行するカッシングの漫画チックなハカセっぷりとってもラブリーなんです♪あと、レトロなメカがけっこうポイント高かったりします。これがいつでも見られるようになるなんて…と、ほんとに楽しみです。

延期のニュースを見て、自分でも意外なほど落胆してしまったらしく(笑)、ふと思いついて原作を漁ってみました。エドガー・ライス・バロウズという作家のSF小説なんですが、残念ながら邦訳は絶版。けっこう古いものなので、もしかしたら原語版はパブリック・ドメインかも?とグーテンベルクを見てみたら、こちらはあっさり見つかりました。読みきる覚悟はありませんが(笑)、いちおうkindleに入れてみました。(映画を再見したあとのほうが読みたくなるかも…)
ご興味のある方はどうぞ♪

Project Gutenberg
At the Earth's Core by Edgar Rice Burroughs
http://www.gutenberg.org/ebooks/123

2010年11月7日日曜日

カッシング自伝

 

Peter Cushing: an Autobiography (自伝にはすでにちらほら触れておりますが、最初に読んだときの感想です)

カッシングの自伝、Peter Cushing: an Autobiography 、ちまちまと拾い読みしております。
じつはこれ、An AutographyとPast Forgettingという二冊の自伝を合本したものです。扉には「すべてを可能にしてくれた、最愛のヘレンへ」と献辞が。表紙にも奥様とのツーショット写真が使われています。・・・部分的にですが読んでみましたら、「すべてを可能にしてくれた」というのが比喩じゃありませんでした。支えるなんてもんじゃないです。もう圧倒されます。・・・そして、前に『恐怖の雪男』の音声解説で監督が言っていた「カッシングはテレビの生放送で演じるのを好んでいた」という話とは矛盾するエピソードが出てきました。

・・・1950年代のテレビはドラマも生放送だったそうで、おまけに数日後に「再放送」まであったんだそうです。つまりすっかり同じドラマをナマでもう一度演じるわけなんですね。
で、俳優さんの立場からすると、最初の放映が好評だと「再放送」のときに同じようにできるだろうかとプレッシャーがかかり、逆に最初の放映で不評を得た場合は、それをもう一度演じるのはこれまた精神的苦痛…というわけで、一回目と再放送の間の数日は「洗練された拷問みたいなもの」だったそうです。ちなみにこのチャプターの冒頭には
「テレビジョンてなんだか知ってる?」
「知らない。テレビジョンてなに?」
ツマミがついたピーター・カッシングさ!」
というジョークが載ってまして、まあそういう冗談が出るくらい出まくっていた、ということらしいです。

で、そのノイローゼ対策のために、奥様が主治医に頼んで、市場に出たばかりの薬を処方してもらったりしたそうなんですが効き目がなく、最終的に見つけた解決策というのが…なんと奥様にスタジオまで来てもらって、放映中コントロールルームにいてもらうこと。それで勇気が出たそうです。はあ…なんというか…か、かわいい…。(…もう三十代後半の話ですよ。「いい大人がナサケナイ!小学生かっ!?」…とは感じないのが、惚れた弱みです…(笑))

ちなみに医者に出してもらった薬はアンフェタミンだったそうで、「5錠飲んでも大して効かなかった」と奥様から電話で聞いた医者は「1錠で象が24時間失神してしまう薬」だと信じていたため、「それでまだ生きてるの!?」と聞き返したという愉快な(?)エピソードが書いてありました。お医者さんもよくわかってなかったんですね。ていうか、アンフェタミンてむしろ興奮系の覚醒剤では…???…とにかく効き目がなかったので薬に頼るのはやめたそうです。…効かなくてよかった!そのまま続けて薬物中毒になってたら、後年の美しい老け顔は拝めなかったかも…ていうか、ハマー映画にも出ることなく早死にして、五十年後に極東の腐女子が萌える機会なんて永遠になかったかも!(^ ^;)

とにかくヘレンさん、マネージャーの側面も良き母親の側面も…という感じのする、ほんとにありがたい奥様だったようです。今風の言い方で言うと「心が折れた」ときに勇気付けてくれた言葉(そういう手紙をたくさん書いてくれたそうです)を引用して紹介されています。…ああ、こんなことを言ってくれる人がそばにいたら、そりゃあがんばれるな、と心底思う言葉です。なんというか、浪速恋しぐれ的な湿った内助の功じゃなくて、すごく、すごく知的で力強いんです。甘やかすわけじゃなくて、言葉に凛とした説得力がある。この方がいなかったら、ほんとにのちのカッシングはなかったかもしれないな…と思いました。そして奥様は…素晴らしいけれど、ずいぶんムリもしたんだろうなあと、と思います。40代の写真が、もうおばあちゃんみたいな顔に見えます。「ムリをした人はエライ」という文脈は嫌いなので、いろいろ思うところがあります…。

…それはともかく、奥様が亡くなったときのことも具体的に、でも淡々と書かれています。こういう人を亡くしたのなら、その後カッシングが「いっきに老け込んだ」のもわかる気がします。「彼女が他界したときに自分の愛した人生も終わったので、この物語ではそれより後のことは書かないつもりだ」とAn Autographyのほうの冒頭にあります。当初は出版するつもりは無く、セラピーの一環として書いたものだそうです。

身近な理解者を得るのはすごく幸運なことですよね。うらやましい。でもうらやんでばかりもいられません。カッシングにしても、一番最初の始まりは、やはり逆境のなかで思い切って一人で動くこと、でした。俳優になってからも、いろんな事情でやむなく父親に金銭的援助を頼みに行き、「なぜまともな仕事を選ばなかった。お前はもうすぐ四十歳になるというのに敗残者だ」とか言われたり。(フランケンシュタインで初めて映画の主演をしたときって、もう44歳だったんですよね…)でもそういう経験や、けっこう精神的に脆い面を抱えて苦労した人だったのがわかって、人物としてリアリティーを感じましたし、親近感もわきました。ほんとに、「さも簡単にやってるように見える」ようになるまでに、どれだけの努力と時間が注がれていることか!

…読んだのはほんの一部なので、これからもちまちま読んでいきます。(インデックスがついてるので便利。とりあえずクリストファー・リーの出てくるところはすべてチェックしました。わりとあっさりと触れられていてちょっと残念?(笑))

2010年11月2日火曜日

『フランケンシュタイン 死美人の復讐』(1967)

 

フランケンシュタイン 死美人の復讐 [DVD] ピーター・カッシングのフランケンシュタインシリーズ第四作目、原題は『Frankenstein Created Woman』
「フランケンシュタイン、女人を創造せり」みたいな感じでしょーか?その「女人」はプレイメイト出身で、ジャケット写真では『フィフス・エレメント』のミラ・ジョボビッチ並の露出度だし、男爵はなんか持ってる刃物にきらーんと光が描かれていて「必殺仕事人?」みたいな感じだし、あー、今度はお色気路線ですか…とまったく期待してなかったのですが…

ジャケットのコピーを読むと…
「生きて添い遂げられなかった男女が、フランケンシュタイン男爵の手で一体の人造人間に!」(笑)
…ちょっと待て、ということはこの美女の「中身」は男なのか!?
そーいうことなら話は別だっ!!(なにがだ(^^;))
ていうかいつのまにそんな人情家になっちゃったんだよ男爵ぅ!…とか思ったんですが…
いや、バカにしててごめんなさいッ!冗談抜きでこりゃ傑作でした!

今回は人体の切った貼った(?)がなくて、「魂」をべつの体に注入する…という話でした。おかげで切り株系のエグイ映像はなし。そしてそして、なにより男爵が美しい!(^^;)…もともとはモフ・ターキンから転びましたから、フランケンとか初期のヴァン・ヘルシングとかは「ちょっと若すぎるんだよなあ…」とか贅沢言ってたのですが…とうとう中年期のカッシングでも萌えられるようになりましたッ!(笑)

今回の男爵はどう登場するのかと思えば…なんと自ら氷づけになって蘇生実験の実験台に。登場はその蘇生シーンです。…う、美しい…美しすぎるぜ眠り姫!(我ながらバカじゃないかと思いますが、ほんとに見とれてしまいました。何度見直したことか!(笑))

今回は衣装も黒装束が多くて、すっごくイイです♪上着を脱いだ黒いベスト姿でシャツを腕まくり!いやー、なんだかすごく色っぽい!コレですよ、やっぱ男爵は!(けっこう腕毛がボーボーだったりはするんですが…胸毛はうすいのにねえ(笑))

なぜか両手にずっと(食事中まで)黒い手袋をしていて、指先に力のいることができなくなっているらしい(手術も自分でしないで、指示だけして助手の医師にやらせる)のですが、これの前作でなにかあったんでしょうね。(これの前の作品は来年DVD化予定の『フランケンシュタインの怒り』らしいです。楽しみっ♪)この黒手袋姿が、またイイです♪

なんかあらすじも書かないうちに重箱の隅(いや、私にはメインディッシュ(笑))でエンジン全開しちゃいましたが…うーん、じつはあまり設定を書きたくない作品です。
「フランケンもので、今度は女を作る話にしようや」…って企画が出たとき、こんなストーリー思いつくかなあ、普通?…ってくらい、一ひねりも二ひねりもしてあるんです。予備知識がなかったおかげで「おおっ!そうきましたか!」と楽しめたので、未見の方にはなるべくそのまま、作品を見ていただきたいです。

まあ差し障りのない程度にいきますと、まず、「フランケンシュタイン男爵が女を作る」ですぐにイメージされるような、創造主と被創造物の間の疑似恋愛…これはまったくなし!(拍手!)今回は冷淡すぎるくらいの扱いで、第一作目の継ぎ目だらけのモンスター(クリストファー・リー)に対する態度のほうが、よっぽど愛情たっぷりでした(笑)。

今回の「被創造物」には個人的に背負ったドラマがあるのですが、そういう悲劇に対する感情移入はまったくない。大事なのはあくまで自分の実験が成功した結果できた作品だから、みたいな感じなんです。おかげでクールビューティーな男爵が維持されました(笑)。

…ありがちなほうの、創造物に感情移入する役割はというと、助手の医師がそれを担います。ああ、うまくできてるな。この人が「人情」の部分を引き受けてるから、男爵は安心して(?)かっこいい男爵でいられるわけです。

…とはいえ、今回の男爵はやっぱりドラマ上はわき役です。でもそのメインのドラマもよくできていて、ホラーと悲恋ものとマッドサイエンティストものが、きちんとかみ合っているんです。なので、男爵が出ていないところもまったく退屈せずに見られました。お話が、とにかく丁寧にできていました。なんだか嬉しい!(まあ埋葬して半年経った首が腐ってないとか、いろいろツッコミどころはあるんですが!(笑))

音楽ももの悲しく、フランケンものでは異色作、という評判にもつくづくうなずけました。しかしジャケット写真ははっきり言って詐欺です!(笑)というか、写真から想像するようなしょーもない映画ではなかったので、得した感があるというべきか。でも、写真のような露出度で女優さんが出てくるシーンはまったくないので、そのへんの期待で見た人には肩すかしでしょう。半裸の美女と男爵、というおいしい構図は本編にはこれっぽっちもありません!(笑)それにこの写真にある「お姫様だっこ」している男爵、カッシングの細腕ではなんかあぶなっかしいです!(笑)

特典には予告編のほかに、『ワールド・オブ・ハマー』というハマー映画のミニ解説番組みたいなのの、フランケンシュタインの巻(?)がついてます。ナレーションはオリバー・リード。これはたぶんテレビのシリーズものかなにかで、まえにYoutubeで同じシリーズのものを見たことがあります。

写真ギャラリーも枚数が多くて、作品のスチール以外に撮影中のなごやかなスナップがほほえましいです。カッシングの「いかにもブロマイド」なポーズの写真も貴重。ヒロインを演じたスーザン・デンバーグ(けっこう変化のある役なのですが、モデルさんの余技とは思えないうまさでした。もともと女優の勉強してた方なのか、それとも監督の指導がうまかったのか?)の写真では、もろに「今月のプレイメイト」な(笑)、作品とはまったく関係なさそうなのも入っているので、本編で落胆した方への救済策かな?なんて思いました。いや、マジでお見事なプロポーションでした。
(でも色気ではカッシングに軍配♪)

あ、書き損ねてましたが、ヒロインの父親役の人が、遠目にはデビッド・バーク(グラナダ版ホームズのワトスン!)似のなかなか素敵な俳優さんでした。出番が少なくて残念!(^^;)
 

2010年10月22日金曜日

『恐怖の雪男』(1957)

 

恐怖の雪男 [DVD] (自伝を読む前に初見したときの感想です)

…正直バカにしてたんですが…悪かった!なんか真摯に作られてる映画でした。雪男自体はほとんど見せないし、ドラマはいろいろな思惑の人間側にあって、雪山ロケをした映像も説得力がある、ちゃんとした映画でした。タイトルの安っぽさでだまされました…。(^^;)

モノクロだし名前が出てくるのは二番目なので、カッシングは助演だと思ってましたが…バリバリの主役でした。すばらしかった!

物語は、チベットの山中に調査に来ているローラソン博士(カッシング)が、雪男探しのアメリカ人一行に合流し、雪山に出かけるというもの。アメリカ人は雪男を生け捕りにしてお金儲けするのが目的で、学術的な興味のローラソンとはしばしば対立します。そして「雪男」にトラウマ的な強迫観念を抱いている男や、危険な冬の雪山登山に反対するローラソンの妻(手伝いとしてチベットに同行している)などが絡みます。
最初、ローラソン夫妻はチベット僧の元で世話になっているのですが、雪男探しに出かけるローラソンに、僧は「雪男を探すなら謙虚になることだ。権力を考えず、自分の尊厳を考えろ」というようなこと言います。このあたりが全体のテーマになります。

もとはテレビだったそうで、なんとカッシングはそちらでも同じ役をやったそうです。テレビ版を忠実に、ただし予算は多くして映画化したものだそうです。監督と脚本家による音声解説があるのですが、それに出てくる話がいろいろ貴重でした。カッシング情報(?)もいろいろ。

びっくりしたのが、カッシング主演で前にYoutubeで見た『1984』(ジョージ・オーウェルの『一九八四年』の、BBCドラマ化作品)が、生放送番組だったということ!…そういえば、テレビ草創期ってドラマも生だったんですよね…。生放送であの題材、そしてあの壮絶な演技をやってたのか!と、ちょっとショックなくらい感銘を受けてしまいました。日本でもDVD出してほしい…!

監督によると、カッシングはテレビの生放送の「おおぜいに見られてる感じ」が好きだったそうです。スタジオでは見られてるって実感はあまりなかったんじゃないかと想像しますが…とにかく生放送のプレッシャーを楽しんでいたということでしょうか。舞台も好きだったでしょうね。根っからの役者さんなんだなー…。

(追記・のちに読んだカッシングの自伝では、生放送のプレッシャーは半端でなく辛くて、主治医にちょっとアブナイ薬まで出してもらったという話がありました。効き目がなくてやめたそうです。まーいろいろと、監督は知らないこととか、カッシング自身が隠してたこととか、あるんでしょうね)

ほかにも、真剣なシーンを撮ってても、カットと言われたとたんに歌って踊りだしたとか、こっそり小道具を持ち込んで本番で初めてそれを使うので、みんなそれを期待して(?)見ていた、というような逸話も。「プロップ・カッシング(小道具のカッシング)」という異名の話が、情報漁ってると出てくるのですが、そこからだったんですね。(クリストファー・リーは「そんなアダナは聞いたことがない」とインタビューで言ってましたが(笑))なんかスタッフから愛されてたというご本人のキャラクターが、少しだけ見えてきました。(…ということは、マイブームも後半にさしかかったかな、とかチラリと思う自分でした…(^ ^;))
途中で眠くなって断念したので、続きの音声解説を聞くのが楽しみです。

金目当てのアメリカ人を演じたのはフォレスト・タッカーという米国人俳優さんなのですが、なんか見覚え、聞き覚えがあります。西部劇とかにたくさん出ていたようです。金儲け主義者といってもちゃんと内面のある、そうなるだけの経歴設定があるキャラでした。終盤はけっこう圧巻な見せ場もありました。
テレビ版でこれを演じたのは、なんとスタンリー・ベイカーだったそうで、「ええーっ!そっちも見たい…」と指をくわえてしまいました…。スタンリー・ベイカーはのちにナバロンの要塞などに出た人気俳優で、みずから監督した『ズール戦争』を昨年見て、すっかり感服した記憶があります。そのテレビ版て、DVDとかになってないのかな…。ピーター・カッシングとスタンリー・ベイカー共演だなんて~~!(よだれ…(^^;))

余談ですが、映画のなかで、ローラソン博士の妻の名前が「ヘレン」でした。カッシングの実際の奥さんの名前と同じなので、なんか最初耳について落ち着きませんでした…。カッシングに関するコメントを聞くと、プライベートの愛妻家話が必ず出てくるので、なんか覚えてしまいました…。(五歳年上の奥さんで元女優さんだったらしいです。写真を見たら、カッシングが横に並ぶと「美女となんたら」に見えるくらい(?)、エレガントな美人でした…妬く気も失せました…(笑))

(こちらも後に読んだ自伝では、感情移入するためにカッシング自身が提案してそういう名前にしたんだそうです。なんかもう…言葉もありません。このお二人の絆の話には!)

2010年10月14日木曜日

『フランケンシュタインの復讐』(1958)

 

フランケンシュタインの復讐 [DVD] カッシングのフランケンシュタインシリーズ二作目。一作目の最後でギロチン刑に処せられたはずの男爵がじつは生きていた!(笑)という、もう「一本目が当たったからムリヤリ続編作ってみました!」というのが見え見えの話なんですが、期待しなかったせいかすごくおもしろかったです!カッシング最高です。惚れなおしました!

お話は、ギロチンを逃れた男爵がシュタインと名前を変え、医師として開業しつつ例の研究も続けていて・・・というもの。新しい「クリーチャー」も出てきますが、一作目ほどグロいビジュアルではありません。クリーチャー自身の心理や悲劇性というのもちゃんとあって、キャラクターとしての格が上がっています。役者さんもよかったです。

一番気になってたのは、「ムリヤリ男爵が生きてたことにする」あたりの言い訳をどうつけてるのかな、というところだったんですが・・・。すごい。ちゃんと理屈が通っている。関与する人間の心理がウソくさくなくて。
それは全体にわたって言えることで、低予算映画なのに脚本はちゃんと作られてるんですね。(まあ人体パーツの扱いとか、「目玉」の動きとかは今見ると爆笑ものですけど(笑)、それは時代ということで)

・・・なんか甘えた設定のB級映画とかで汚れた目から見ると、当たり前のように実現している水準の高さにびっくりです。・・・これは、カッシングに限らず、出演者の演技力にも負うところ大だと思います。脇役まで、こんなに年齢の高い人(つまり役者として経験を積んでいる人で、当然うまい)がたくさん出ているという贅沢さは、日本のこの手の作品ではなかなか実現されないことですよね…。

男爵の助手になる若い医師をやってた方に見覚えがあるのですが、ちょっと何で見たのか思い出せません。
研究室の番人役のおじさんは・・・あらまあ、『吸血鬼ドラキュラ』で居酒屋のおやじさんをやってた方では?(笑)

カッシングのフランケンシュタイン男爵は、本当に見事でした。というか脚本段階でも、男爵は狂人ではなくて、あくまで「医学の天才」である・・・というラインを崩してないんですね。だからその才能に引かれて協力者が現れる、という展開に無理がない。原作と違って罪悪感はないものの、邪悪な意図もないのです。べつに人を害そうなんて思ってない。ただ、その熱意と優先順位が世間からは認められない領域にいってしまってる、というのが悲劇なんですね。

ボタンホールに必ず花をさしたり、一作目よりさらにエレガントになったような気がします。女がらみがないので(キャラは出てきますが、色恋沙汰はなし)、かっこよさが際だちます。うーん、やっぱ男爵は研究の前には女なんか眼中になし、という方向の「異常さ」が似合います。サービスのためとはいえ、別の作品で女に手を出す男爵はなんとなく「かっこわるい」です。(とはいえ、一作目は「カッシングの珍しいキスシーンが見られる」という意味でも貴重なのですけど(笑))

冒頭の処刑前の髭面から始まって、正装やら白衣やら、コテンパンにやられた手負い姿(上半身ヌード。この方は脱いでもあまり嬉しくないけど(笑))やら、はたまたデヴィッド・ニーブンばりの洒落者紳士姿まで見られて、カッシング鑑賞ビデオとしても一級品です(笑)。しかしつくづく、上手い人ですねえ・・・

DVDの特典映像が少ないのですが、予告編は見てみたら貴重なものでした。本編にはない男爵の述懐が使われてるんです。これは予告編用なのかな。もしかしたら本編で切られたカットなのかもしれません。とにかくカメラを見据えて自分の身の上を語る男爵、すごくステキです。

特典といえば、懐かしい『ブライド』の予告編も入ってました。そういえばこれもフランケンシュタインものですね。これのフランケンシュタイン役はスティングなんですよね。ミュージシャンとしてはファンなのですが、俳優としては贔屓目にも上手くはないので、見ていて恥ずかしいこともしばしば・・・(^^;)。これは見なかったんじゃないかなー。ケーリー・エルウィズ(『アナザー・カントリー』の美青年、転じて『キング・オブ・タイツ』(笑))なんか出てたのかー…。このころのジェニファー・ビールスはまたかわいいですね。なんだかこちらも見たくなりました。
 

2010年10月9日土曜日

カッシング&リーの22本/"Christopher Lee and Peter Cushing and Horror Cinema"

 

Christopher Lee and Peter Cushing and Horror Cinema: A Filmography of Their 22 Collaborations

(すでにこの本には触れておりますが、購入したばかりのときの感想です) 

 ピーター・カッシングクリストファー・リー共演作の解説本"Christopher Lee and Peter Cushing and Horror Cinema: A Filmography of Their 22 Collaborations" の感想です。といっても洋書なので、まだごく一部を拾い読みしただけですが・・・。

タイトル通り、お二人は22本の映画で共演したそうで、そのすべての映画に関するデータと、撮影中の逸話、メディアの批評などをまとめたものです。初めて見る写真もたくさんあって、目の保養です(笑)。カッシングとリーが寄稿した前書きもついています。カッシングは出版される前に亡くなったそうなんですが、原稿に目を通し、前書きを書く時間はあったようです。

写真を堪能したあとは、逸話として聞きかじっていた、「奥様の死で落ち込んでいたカッシングが『ホラー・エクスプレス』から降りようとしたのを、リーが引き留めた」という話のところを探して読みました。思ったほど萌えエピソードではなかったんですが(なにがあったと思ってたんだ!(笑))「カッシングの性分を知ったうえで、いくぶん強引に引っ張るリーと、繊細なカッシング」というキャラ通りの(?)エピソードでした。

『ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急“地獄”行(つくづくアレな邦題だ(笑))は、1972年にスペインで制作された映画で、カッシングとリー主演。シベリア横断鉄道を舞台にした、えらく壮大なSFファンタジー(?)+ゾンビ、というトンデモカルト映画です。テリー・サバラスも派手な役で出てます。(笑)

…スペイン入りしたカッシングは、空港で出迎えてホテルまで送ったプロデューサーに、「とても礼儀正しく、紳士的に」…「映画から降りて明日イギリスに帰りたい」、と言い出したそうです。理由は、最初にもらっていた脚本から書き換えられたものを見て、気が変わったということなのですが・・・。実際にはカッシングの奥様、ヘレンさんの死から一年も経たないうちの海外での撮影で、悲しみの余韻とホームシックとで気むずかしくなっていたらしい、ということです。奥様の闘病から死の間に20キロも痩せたという愛妻家ですし、もともと海外に出るのはあまり好きではなかったとか。
(しかしスペインに来てからこんなことを言い出すなんて。明らかに精神的に参って混乱していたんだと思いますが、プロデューサーの気持ちを考えるとかなりの「困ったちゃん」です…。が、今は「そんなとこもかわいい」とか萌えてしまう・・・(^ ^;))

すでに撮影を始めていたプロデューサーはショックを受け、一週間前から撮影に入っていたリーに大慌てで相談します。リーは「心配いらない。撮影後にホテルで会おう」と請け合って、カッシングを交えた三人で会うことに。

・・・リーは何をしたかというと・・・いきなり「カッシングを安心させるように計画された逸話」(どんなんだ?)を切れ目なくしゃべり続け、カッシングに「降りたい」などと切り出す隙を与えなかったんだそうです(笑)。一人でしゃべりまくったリーは「お休み」と場を切り上げ、「じゃあピーター、明日仕事場で会おう」とサラリと付け加えます。これで一件落着。(笑)

カッシングは一週間後にはすっかり陽気になり、プロデューサーに、「脚本も今では気に入っている」と告げて、気むずかしくなっていたことを謝った、とのことです。

ああ、それほど萌えないと思ってましたが、改めて読むと萌えますわ。やはり(笑)。(・・・)
だってこれ、やっぱりリーがいなかったら降りてますよね。絶対。ほかの部分からも、「リーがどっしりと支えてくれたから安心できた」というのがありありと伝わってきてたまりません。絶対気を変えさせられる、と自信満々のリーもいい♪(なんてイメージを裏切らない人たちなんだろう(笑))あらためてやおいなんかデッチ上げるのがバカバカしくなりますよ。まんま立派にJUNEじゃないか!(言いすぎ(^ ^;))

添えてある写真がまたいいです。撮影中の、二人の笑顔のツーショット。(激萌え♪)
『ホラー・エクスプレス』でのカッシングは、出演作の中でも群を抜くベッピンぶりをさらけ出しているのですが、その陰にそんなエピソードがあったと思うと・・・次にDVDを見返すときは冷静でいられなくなりそうです!(笑)

・・・こんなエピソードもてんこ盛り(?)で、日本語だったら徹夜で読み切ってしまいそうな本なんですが、英語なのがつくづく恨めしい。著者は英語教師だそうで、カッシングの自伝と比べるとはるかに読みやすい文章ではありますが。
(カッシングの自伝は、世代のせいか個性なのか、古い言い回しや文法が普通でない文章がけっこう出てくるので、自分の英語レベルでは「解読」にえらく時間がかかるんです…(^ ^;))
どこかで翻訳出してくれないかな。ほんとに!

ホラー映画関係の書籍というと、なぜか「日本のマニアさんが作品や撮影秘話を紹介・解説する」みたいな、ワンクッション置いたものが多いんですよね。それも『BSマンガ夜話』的なノリでは面白いんですが、情報に関してはどうしても孫引き感があるし、解説者の趣味のバイアスがかかってしまうんですよね。もっとこういう直接取材したものや、一時資料に近いものの翻訳書も出してほしい!・・・うーん、需要が少ないのはわかってるけど、日本語版Kindleが出て、本家並みに電子出版の敷居を下げてくれるとしたら、できるのでは!?(あ、翻訳書は別でしたっけ…?)

2010年10月5日火曜日

『ブラッディ ドクター・ローレンスの悲劇』(1974)

 

ブラッディ ドクター・ローレンスの悲劇 [DVD] (2010/3/28に、DVDが国内初リリースになったときの感想です。レビューなんかではわりと叩かれることもある作品ですが(笑)、個人的には、カッシングがナイーブな面を強調して演じるのを堪能できて、大変気に入っています。初見ではちょっとショックだったのもたしかですが・・・詳しくは本文をご覧ください。ホラーファンというよりカッシングファンの未見の方には、「だまされたと思って見てみて!」とおすすめしたい一本です♪)


ピーター・カッシング「ニューリリース」(ここがうれしい(笑))DVD、『ブラッディ ドクター・ローレンスの悲劇 』、さっそく鑑賞いたしました♪(原題は『Night of the Ghoul』。邦題タイトルには枕詞的に『ピーター・カッシングのグール』とついています。グールは人食い鬼的な怪物のことらしいです)

まずジャケット写真があきらかにキャプチャー画像なのを見て「・・・ワンコイン並のクオリティ?」と覚悟。・・・中身の映像もまさにそうでした(笑)。
まあそれはともかく、作品としては…かなり覚悟をして見たせいか、意外にも退屈する箇所なしで大いに満足。買ってよかったです!なんせカッシング作品では『デビルズ・ビレッジ/魔神のいけにえ』みたいな極北トホホ作品を見てますから、「アレに比べたらぜんぜんまとも!」というへんな基準が…(悪食になじみすぎました…そろそろまともなエンターテインメント見ないと!(^ ^;))

まあそれはともかく、 デビルズ・ビレッジを引き合いに出す必要はない作品でした。ほんとに。74年作品でカッシングの演技も美貌もすばらしく、設定もおいしいし、あと美術がけっこういいです!

・・・ストーリーのほうから行きますと、時代設定はたぶん第一次大戦後くらい?金持ち坊ちゃんや嬢ちゃんたちがパーティーをしていて、余興で肝試しをしたりしています。で、車(ハンドルを回してエンジンをかけるクラシックカー)で競争することになり、おきゃんなヒロインがガス欠と霧のため立ち往生。謎めいたドクター・ローレンスの屋敷に迷い込み、恐ろしい目に遭うことに・・・。

ドクター・ローレンスがもちろんカッシング丈。ヒロインがベロニカ・カールソン。(『フランケンシュタイン・恐怖の生体実験』でもカッシング演じるフランケンと共演してました)ローレンスの庭番で毛皮フェチの変質者っぽい若者に、若かりしジョン・ハート!(大好きなんです!なんて贅沢なキャスト!(笑))

あと、もう一人引き立て役っぽく出てくる女の子をやってた人は、なんとなく『ツインピークス』でローラ・パーマーのお母さんをやってた人に似てました。(74年にこの程度の若さ・・・なのでご本人かと思ったんですが、確認したら別の人でした)ヒーローっぽい元将校の男の人は、しゃべり方含めてなんとなく「さえないコリン・ファース」という感じ。(笑)

まずカッシング鑑賞目線ですごくショッキングだったことが・・・。主人公は妻を亡くしているのですが、その「死んだ妻の写真」が、カッシング丈の実際の奥様、ヘレンさんの写真なんです。自伝にもドーンと載っている、若い頃のすごく美しい横顔のものなんですが・・・この写真が、けっこう重要な小道具として何度も映されるんです。う、うわー・・・。(^ ^;)

・・・映画が作られたのは、実際の奥様が亡くなってから三年くらい後です。この写真が出てきたらもう、なんだか主人公とカッシング自身があまりにオーバーラップしてしまって、痛ましいを通り越してゾッとしてしまいました・・・。

小道具を自分で工夫して用意する、という話はあちこちで聞いてましたが…こういうことするか普通?私だったら、「連れ合いが死んだ役を、実際の死んだ連れ合いの写真を見ながら演じる」なんて、逆に辛くて絶対できない!と思うのですが・・・。愛妻家というよりオブセッションの域に見えて、映画と同時進行で「死んだ妻の面影にとりつかれた老俳優」のホラー映画が脳内で完成してしまいました・・・。(私生活にまでホラー味の色眼鏡が・・・(^ ^;))

邦題通り、ローレンスは悲劇的な末路を迎えます。そのラストシーンにも、この写真が重要な小道具として一緒に映っているのです・・・。なんか・・・なんか映画そのものに対してより、そのオーバーラップに対してたまらなくなってしまいました。すごく怖くて悲しい。いけないものを見てしまったような感覚に陥りました。しかも絵面として、ある意味すごく美しいシーンだけに・・・。

自伝を読みだした直後ということもあり、過剰反応だとは思いますが、そのへんを抜かしての感想・・・というのは、今はショックが残っててちょっと難しいです。でもカッシングの演技はたしかに「いつも通り」すばらしかったです。

ネタバレを避けると書けませんが、すごく重い葛藤を抱えているキャラクターで(まあ、ローレンスが家族に起こった過去の事件をほのめかすあたりで察しがついてしまいますが・・・)、カッシング鑑賞ビデオとしては見所いっぱいです。

舞台が『バスカヴィル家の犬』のダートムアみたいな沼地で、カッシングがあの素敵に節ばった長い指でバイオリンを弾く姿まで拝めて(あきらかに弾いてないですが(笑))…イギリスではホームズ役で人気だったことを考えると、ちょっとしたサービスかも。ホームズファンとしても嬉しいオマケでした。

ジャケットに「ゴシック・ホラー」と書いてありますが、まさにゴシック・ホラー・・・ゴシック風の館で美女が恐ろしい目に遭うという定石を守った作品で、重要な要素である「ゴシック」の雰囲気・・・これがきっちり出ていました。さきほども書きましたが、ほんとに美術がすばらしいです。お金がかかっているようには見えませんが、ムードを描くうえで充分すぎるほど。

出てくるゴシック屋敷はすごく古そうな、雰囲気のあるセットだし、要所要所においてある装飾品は、設定(ローレンスは昔牧師としてインドで活動していた)に関連してインドものが置かれ、エキゾチックにひとひねり。悲劇的なラストシーンにも、エドマンド・バークが言う「崇高な」美しさと、ある意味キッチュな異国趣味とが絡み合っていて、なかなか正統なゴシック・ホラー作品、といえるかもしれません。

(ただし、ローレンスの「秘密」にまつわるインドの扱いはアレですが・・・やっぱ「東洋の奇怪な風習」でなんでも片づけられるものなのか!?(笑))

・・・美術があまりによかったので、さっきスタッフロールを確認しようと拾い見して気づいたのですが・・・なんと最初のタイトル部分がない!?本編の前に、「制作国米国に現存するマスターを使用しているため、ノイズ等があるけど商品の不良じゃないので許してね」みたいな注意書きが出るのですが・・・この程度のフィルムしか残ってないということなのかしら。これはハマーやアミカスじゃなくて、タイバーンフィルムという、やはりホラーで名前を聞いた会社の作品なのですが・・・イギリスじゃなくてアメリカなのかな・・・?でも「タイバーン」て、たしか昔ロンドンの処刑場があった場所の名前ですよね。うーん・・・?

まあとにかく拾いものでした。
監督はハマープロでも活躍したフレディ・フランシス。(ちなみに制作は彼の息子のケヴィン・フランシス。家族制作だったのか…)フレディ・フランシスはハマー映画などで監督をしたあと、後年は撮影技術のほうの専門家になったそうで、『グローリー』などでアカデミー撮影賞を受賞しています。たしかハマーのドキュメンタリーでも、監督としてビジュアルへのこだわりを語っていた方でした。

ストーリーの根本的なところでアレな部分があるのに、パーツごとに見ていくとちゃんとしてる・・・というか、ある意味アンバランスに「濃い」。これはハマーの怪奇映画からの伝統なのかな?なんて思いました。(笑)

2010年10月2日土曜日

カッシングの声でなごむ♪/自伝朗読CD

 

Peter Cushing: Past Forgetting (2010年7月にCDが発売になったときの感想です)

予約していたピーター・カッシングの自伝朗読CD、Peter Cushing: Past Forgetting が一昨日届きました♪
88年にカセットで出た音源の初CD化だそうです。亡くなる直前に収録された『ハマー ホラー&SF映画大全』のナレーションほど声がいがらっぽくはなく、緩急がついてて芝居っ気たっぷりです。
以前本のほうは買ったので、聞きながら目で追ってるのですが・・・うう、それでもけっこう追いつけません。もう、声を愛でるのに徹しますかね。(^ ^;)

数少ないついていけた部分で、面白いところがありました。出た映画のなかで、どういうふうに死んだか、あるいは殺されたかをご自分でリストアップしているところです。なんせ数え切れないほど死んでらっしゃる(笑)うえに、出てるのがほとんどホラーですから、これがもう笑えるの何の!最後に「・・・もっとラクな生計の立て方ってなかったんだろうか・・・?」とユーモラスに結んでいるのもおかしいです。

CDは二枚組で、CD化にあたっての特典ドキュメンタリー音源というのも収録されてます。(まだ聴いていませんが)ケースのディスク留め部分がすごくきつくて、最初取り出すときディスクが折れるんじゃないかと冷や汗かきました。でもきれいなデザインのCDです。聴き流すのはやっぱりもったいないので、少しずつ本を見ながら聴いていこうと思います。ちょっと精神力のいることが立て続けなので、こういうなごみがあるとありがたい…早く届いてくれてありがとう!寝る前に聴けば、すこぶるベッピンなおじいちゃんに本を読んでもらってる孫(?)の気分でいい夢見られるかも♪(笑)

2010年9月25日土曜日

『フランケンシュタイン・恐怖の生体実験』(1969)を再見

 

フランケンシュタイン 恐怖の生体実験 [DVD](8/11(ピーター・カッシング丈のご命日)に再見したときの感想です)

 …ご命日というわけで、家庭内カッシング祭を開催(?)、出演作品を鑑賞することに。複数見たかったんですが、時間がないので一本だけ。(どこが「祭」だ(^ ^;))気に入ってるものはわりとマメに見直していたので、あまりご無沙汰なものもないんですが・・・。一本だけ見るならやはりこれ、ということで、フランケンシュタインシリーズ五作目にして最高傑作(と、自分は思っている)、『 フランケンシュタイン 恐怖の生体実験』を選びました。男爵の水もしたたる鬼畜っぷりと、燃える屋敷でのクライマックスはシリーズでも最高の出来だと思います♪

この作品については何度も書いているのでアレですが・・・命日なので改めて書いちゃいます。いやもう、やっぱイイです!この話は人体の寄せ集めじゃなくて脳移植がテーマ。故国を追われた男爵は密かに実験を続け、優れた脳を手に入れるために殺人もします。逃亡を続ける男爵は、昔の共同研究者で今は発狂している博士を誘拐するため、弱みを握った青年医師と、その婚約者(下宿屋の女主人)を脅して協力させます。そして博士の脳を治療したうえで、昔聞き損ねた公式を手に入れようとします・・・。

というわけで、もう原作の陰は微塵もない(笑)ハマープロオリジナル路線なんですが、わりと映画としてちゃんと見られるというか、脇役に至るまでドラマがきっちりついてるんですね。どう見てもとってつけたようにしか見えないサービスシーン(男爵が女主人アナ・スペングラーを手込めにする)も、裏話を知ったあとはなんか泣けるシーンになりました。

これについては、アナ・スペングラー役のベロニカ・カールソンが、あちこちで書いたり話したりしてくれてます。(彼女はカッシングのことを「優しくて紳士的で最高の男性。みんな彼が大好きだった」と語っています。だいたいそういう誉められ方をされてるカッシング丈。男女を問わず仕事仲間に好かれていたらしいです。もちろん信頼の基盤はいい仕事をする、というところにありますが)以下はフランケンシュタインのサントラ集『THE FRANKENSTEIN FILM MUSIC COLLECTION』封入リーフレットの、カールソンの寄稿から。

 『生体実験』の撮影がもうすぐ終了、という時期になって、ハマープロの経営者ジミー・カレラスが現場に駆け込み、「スポンサーが色気不足だと文句を言ってる」といって、急遽レイプシーンを加えることにしてしまったんだそうです。監督、カッシング、カールソンは「男爵のキャラとぜんぜん合ってない」と反対したにもかかわらず。

さらに「ひどい」のは、「ほとんど撮影が終わってる」こと。当然そのシーンのあとに入るシーンもすでに撮っちゃってるわけで、そこにいきなりそんなシーンをはめ込んだら、演技の整合性が破綻してしまう。実際映画を見ていると、アナがその後男爵個人に対して感情的な反応を見せないので、違和感があります。(あくまで「自分の家に死体が運び込まれたり、自分の婚約者がゆすられて協力されられたりしている」という「状況」に対して反応している)カールソンはかなり悩んだそうです。

キャラがぶれてしまうのは男爵も同じですが、人の悪口は書かない苦労人(?)のカッシング丈は、このあたりについては自伝などでも触れていなかったと思います。カールソンによると、そのシーンの撮影の前にカッシングとディナーをしたんだそうです。これはそういう事情が入る前から約束していたことのようです。カッシングの「original dream」衣装のまま食事に行くことで、カールソンの衣装のうち、紫色のベルベットのドレスがお気に入りだったとか。(親子くらい年齢差があるんですが。カッシングでなかったらちょっと引くかもしれないこのエピソード。なぜかかわいいと思えてしまうのは惚れた弱み?(笑))

 それがそんなことになり、コスプレ(?)でろまんちっくに食事を楽しむどころじゃなくなり、ぞっとするような行為をどうやって上品な範囲でやり遂げるか」をえんえん話し合うはめに。でもどう考えてもそんなことは不可能。最後にカッシングが言ったという言葉を、カールソンは「今でも彼の声が聞こえるよう」と書いています。

 "Please remember, please remember it isn't me Veronica, it isn't me."
(「忘れないで。それは私でないことを思い出してくれ、ベロニカ。それは私じゃないんだ」)

そしてぎゅっとハグしたんだそうです。・・・こっちのほうが映画みたいなエピソードですね。かたや中年過ぎてブレイクした苦労人、かたやまだ新人女優ですから、カッシングは俳優にはどうにもならない問題なのを最初からわかったうえで、若い女優さんが撮影を通じて傷つかないように気を遣ったんでしょうね。いい話であるとともに、ギョーカイのどうしようもなさもよくわかるエピソードですね。監督の力なんか及ばないんだ…。作品のアラを監督に帰するには、慎重にならなくちゃいけませんね。(どーも映画ファンとしてスレてくると、そーいうことをポロッと書いてしまったりします…(^ ^;))

 ・・・さて、この映画を最初に見たときは、じつはアナの婚約者で男爵に協力させられる医師役の、サイモン・ウォードが目当てでした。今見ると、カールソンよりよっぽど大根な演技をしてますね。まあかわいいからいいけど。(笑)この方は『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』に出ていた美人女優ソフィー・ウォードのお父さんで、顔が娘とソックリです。若い頃は暗めの美青年であります。

 あと外せないのが、警察医役のジェフリー・ベイルドン。男爵が起こした殺人事件の捜査にあたる警部のかたわらにいつもいる、ブロンドの美中年です。台詞は少ないですが、皮肉な表情がすごく印象的。ピーター・セラーズの『カジノ・ロワイヤル』でのQなどをやってます。グラナダ版ホームズの『ブルース・パティントン設計書』では、お年を召した姿を見ることができます。設計書を管理しているところの責任者の役で、捜査に来たホームズの相手をします。(腐女子情報…実生活ではゲイの方です)確認したらいまだ現役!86歳になりますが、2010年の出演作品があります。あっぱれ!今どんな姿になってるのかな。

クライマックスを盛り上げるのが、脳移植をされるブラント博士・・・というか、脳の入れ物に体を使われてしまうリクター教授役の、フレディー・ジョーンズ。脳が入れ替わるので二役やってることになりますね。リクターでいるシーンはほんの少しだけですが。ブラントになったあとは、感情の起伏が大きいシーンばかりなのですが、抑えた演技なのがすごくいい。「さしずめ私がクモで、おまえはハエだ」と男爵に復讐する、ラストのシークエンスは圧巻です。この方は他でもカッシングと共演していますが、やっぱりグラナダ版ホームズにも出ています。『ウィステリア荘』でホームズと張り合うベインズ警部役で、こちらも内に秘めた対抗意識を抑えた演技で表現していて、すごく印象的です。名優ですね。そしてこの方も、83歳にして現役!来年公開の作品が制作中となってます。あっぱれ!

 『…恐怖の生体実験』は音楽もすばらしくて、怪奇映画というより一種の古典悲劇みたいな風格さえ感じます。(悲劇といってもロミオとジュリエットみたいなのじゃなくて、リチャード三世とか…みたいな?悪漢破滅劇とでもいいますか)オリジナルの話なので「脚本書いたのは誰なんだ!」と気になって調べたんですが、バート・バットという人で、脚本でクレジットされてるのはこれ1本。あとは助監督ばかりやっている方でした。当時の映画の作り方では「脚本家」というのは専門教育を受けてやるものではなくて、成り行きでたたき台を作る、程度のことみたいですね。プロデューサーが共同執筆みたいな表記になってます。実際プロデューサーが「誰もいないからお前書け」と言われて書いた、みたいなのもありますし。今イメージする「脚本家」とは別物ですね。(たしかビリー・ワイルダーが監督を始めたきっかけを、「誰も私の脚本なんか読まないからだ」と皮肉に書いてた記憶があります)

邦題がアレですが、原題は『Frankenstein must be destroyed』。こっちのほうがイメージぴったしです。見せ場の作り方とか、幕切れとか、まるで歌舞伎のようです。いよっ、千両役者っ!(落ち着け(^ ^;))無人島にハマー映画を一本だけ持っていくとしたらこれにします。これがシリーズ最後ならよかったのに・・・なあ・・・。(笑)

2010年9月23日木曜日

Christopher Lee and Peter Cushing and Horror Cinema

Christopher Lee and Peter Cushing and Horror Cinema: A Filmography of Their 22 Collaborations

今、同人漫画の絵コンテ修正をしているのですが、ちょっと行き詰まりを感じてへろへろになっていたところ、ふと拾い読みしたピーター・カッシングとクリストファー・リー共演作品の解説本、"Christopher Lee and Peter Cushing and Horror Cinema: A Filmography of Their 22 Collaborations"にあったエピソードでちょっと生き返ったので、ご紹介します。

『怪奇!血のしたたる家』(The House That Dripped Blood (1970))の監督、ピーター・ダッフェルの話なのですが・・・先日感想を書きましたが、この作品はホラーのオムニバスで、カッシングが出ている第二話は蝋人形の話です。で、その中に、主人公がうたた寝をして悪夢を見るシーンがあります。道具立てはチープなものの、夢のシーンなので幻想的で、とても印象的なシーンなのですが・・・じつはこのシーンは脚本にはなくて、監督が主人公の強迫観念を強調したいと思い、撮影が始まってから夜に自宅で考えて、翌日スケジュールにムリヤリねじ込んで、半日で撮影したというシーンだったんだそうです。(実物を見ないとなにがなんだかわからない話になっちゃいますね…スイマセン)

スモークの焚かれた蝋人形館の中を、主人公が手探りしながらスローモーションで歩き回る…という、今の目で見ると「いかにも」で、少し笑えるくらいのシーンであります。ですが、本の解説を読むと、これがこのあとの主人公の行動に説得力を持たせている、ということなんです。そう意識して見直して、「もしこれがなかったら…」と考えてみたらホントに大違いで、思わず唸ってしまいました。低予算映画なので画面のチープさにどうしても目が行ってしまってたのですが、この「主人公の強迫観念」を台詞なしのシーンに構成して見せてしまう、というのは、すごく「映画してる」感じがします。(一番お手軽なのは会話に説明を盛り込んでしまうことですが、それでは情報が伝わるだけであって、受け手の感覚には響かないですよね)

このエピソードの中で一番印象的だったシーンが、そんなふうに撮られたものだったなんて、衝撃でした。同時に、ものを作るプロセスってこういうことなんだな、と納得がいった感じで。「それまで存在してなかった思いつき」を殺さないで、実行してみることって大事だと。うまくいけばそのままいけるし、うまくいかないな、とわかれば削ればいい。その繰り返しなんだと。とにかく頭の中から出してやらないと。…我田引水ですが、いったんまとめてから新しい要素を思いついて崩してしまう、を繰り返している自分のプロセスも無駄じゃないかもしれないぞ…?と思えてきました。なにより今欲しかった励ましです。勘違いだってなんだっていい。とにかく、何事も「こんなこと虚しい」と思ってしまったら先へ進めません・・・いいタイミングで助けられました。自分がそういう状態で読んだから、こんなふうに感じるのでしょうね。

もう一つは、『ミイラの幽霊』(The Mummy (1959))のエピソード。『ハムナプトラ』の原型みたいな話で、カッシングがエジプト研究家を、クリストファー・リーが蘇ったミイラを演じました。(でもこれ自体もボリス・カーロフの映画のリメイクらしいんですが)エジプトのミイラが蘇って人を襲う・・・なんてとこからして、もうB級臭さプンプンなのですが・・・案の定、カッシングの妻役で出演したイボンヌ・フルノー「どうせ二級の作品」と高をくくって出たんだそうです。ところが、です。カッシングやリーが真剣に役を掘り下げているのを見て、見方を変えなくちゃ、と取り組み方が変化したんだそうです。
決して、イマドキのノリによくある「バカらしい行為にあえてエネルギーを注ぐ」っていうんじゃなくて、「キャラクターの心理や物語の流れに少しでも説得力を増すための工夫を、制約された中で真剣にやる」ということです。(真剣といってもガチガチした雰囲気じゃなくて、休憩時間他愛無いいたずらに興じたりしてるので微笑ましいんですけど(笑))
たしかにできあがった作品のストーリーはB級なのですが、妙な説得力というか、演技に密度があって、引き込まれるところがあるんですよね。

カッシングの出演作品はほとんどそんなのばっかり(^ ^;)なんですが、なんというか、さきほどの『・・・血のしたたる家』の監督の話といい・・・背筋を伸ばされる感じがしました。どんなジャンルでも、作り手が「どうせこの程度」と白けていたら、ホントにどうしようもない。今できることを探してベストを尽くすこと。これに尽きるんだな…。言葉のうえでは耳タコなことなので、別の状況で読んだらなんとも思わないはずの、ありふれたエピソードですけど。自分の状態によって受け取り方が変わるもんだな…と、つくづく。欠けているものにばかり目が行って落ち込みやすい自分には、このタイミングで読めたことが大事。がんばろう・・・。

2010年9月22日水曜日

三十代のターキンに萌え

 

スター・ウォーズ―ローグ・プラネット (Lucas books)

スターウォーズの小説版のうちの一つで、『ローグ・プラネット』というのを図書館で借りてみました。
「ターキンの出世物語ってスピンオフにあるのかなー」という興味で調べたら、これに出ているらしいので。…ジェダイ関連のところは飛ばして(スイマセン(^ ^;))探したところ、けっこう早いところで参上…というか、これ、ほとんどメインキャラの一人みたいな扱いでは?(わくわく♪)…なんと三十代のターキン。しかも最初からレイス・サイナーとかいう宇宙船製造会社社長のカップリングキャラとセットで出てくるという至れり尽くせり。二人とも「筋肉質の痩身」「細い眉と射抜くような緑の瞳」「貴族的な顔立ち」。そんでもって「十年来のつきあい」の旧友。(ということは学生時代同窓?金持ちの子弟→パブリック・スクール→『モーリス』と『アナザー・カントリー』の世界…→以下妄想出血大サービス(笑))
サイナーは密談の最中もターキンの「均整のとれた筋肉質の長躯」をジロジロ眺め、話がまとまると「まんまとターキンの気を引くことに成功したようだ」とほくそ笑む…

なんですかこれは!?
狙ってる?ねえ、もしかして狙ってる?(←違う)

…三十代のピーター・カッシングってそれほど「貴族的な」顔でもないので、やはり美しく年老いたお顔から逆算してイメージしてます。おお、素晴らしい。萌えます。脳内イメージをお見せできないのが残念です…。(←バカも極まれり)書いてるのがブラッド・ミュージックのグレッグ・ベアっていうのもオドロキでした。すでにオリジナルで名が知られてる作家さんがスピンオフを書くなんて…そういうイメージはなかったのですが。ちょっと得した気分。(?)

2010年9月21日火曜日

『怪奇!血のしたたる家』(1970)

  

怪奇! 血のしたたる家 -デジタル・リマスター版- [DVD]

嬉しいことにニューリリースDVD!4つのエピソードが入ったオムニバス・ホラー。第二話にピーター・カッシングが、第三話にクリストファー・リーが出ています。それしか予備知識がなかったんですが、見てみたらほかにもデンホルム・エリオットジェフリー・ベイルドンとゆー好みの役者さんが出ていて、ホクホクものでした♪

制作のアミカス・プロダクションというところは、ハマーよりあとにできたホラー作品専門(?)みたいなところなんですが、これまで見たカッシング作品でもいくつかアミカスのがあり、個人的にはハマーよりなじみやすいです。怪奇というより不思議な怪談という感じ。ストーリーを書き出すとたいしたことないんですが(^ ^;)、すごく役者さんのしどころがある作品が多いような。キャストが豪華なのも理由かもしれませんが。残酷描写より役者さんを見せる比重が高いんですね。

さて、今回のはある因縁つき(?)の家の話。その家に入居した人は次々に恐ろしい目に遭う、という筋立てです。最後にレンタルした老俳優の失踪事件を捜査しにきた、スコットランド・ヤードの警部補が狂言回しになります。(最後はこの人自身がエピソードに取り込まれて終わるので、正確には五つのエピソードということになるのかな)

エピソードとエピソードの間に「家のせいです」と曰くありげに言われるんですが・・・はっきり言って家関係ないです(笑)。原作ロバート・ブロック(『サイコ』の原作者でもあります)の作品からいくつか選んで一つのオムニバスにまとめたらしいので、まあ「家」は映画でオムニバスにするための方便ですね。それぞれの話もかなり脚色されてるそうですし。

目的のカッシング出演作は、蝋人形館の話。カッシングの役は引退した元株式仲買人で、生涯独身で来た人です。例の家を気に入り、読書と音楽鑑賞とガーデニング三昧の隠退生活を送ろうと引っ越してきます。(立地が田舎という設定らしいです。近くに鴨が泳いでる沼があったりします。このほとりにカッシングが立ってるシーンが、妙に「いかにも」なポーズでかっこよくて(笑)、半分笑いながらも「ほお!」と心の中でため息ついてしまいました(笑))

近くの町に出た彼は、時間つぶしに古い蝋人形館に入ります。ホラーテーマの寂れた蝋人形館なのですが、そこにあったサロメの人形の顔が、かつて振られた美女にそっくり。突然現れた館主は、その人形のモデルは死んだ妻だといい、「美しいでしょう。あなたはまた来ますよ」と予言めいたことを言います・・・

オチはちょっと笑える(?)かもですが、追いつめられた表情のカッシングは絶品なので(笑)なかなか見物でした。難はイマイチ蝋人形がモデルに似てないことですかね…。(そのせいでやっぱりちょっと笑える(^ ^;)。しかしモデルの女性の写真はほんとにきれいです。見たことない人ですが、なんていう女優さんなんだろう…)

各エピソードは二十数分しかないので、短時間にルックス絶頂期のカッシングを鑑賞したいときによさそうです♪(自分から見たルックス絶頂期は72年なんですが、まあ近い感じです)カッシングもリーも被害者側なので、お二人の恐怖におののいた顔が見られてお得です。(笑)