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2010年12月17日金曜日

『フランケンシュタインと地獄の怪物』(1972)

 

フランケンシュタインと地獄の怪物 [DVD](4月にDVDを購入したときの感想を少々推敲したものです)


ピーター・カッシングのフランケンシリーズ最後の作品で、1972年の映画です。(映画データサイトでは1974年なのですが、カッシングの自伝では72年となっているのです。撮影72年、公開74年、なのかな?)解説によると、監督のテレンス・フィッシャーの最後の作品で、ハマープロの最後のゴシックホラーでもあるそうです。(個人的には、これまでに見たハマー映画で面白かったものの多くがこの監督の作品です)

これまでなかなか買う気になれなかったのは、フランケン男爵の扮装が・・・いまいちアレなためです。(笑)ハマー映画のドキュメンタリー『ハマー ホラー&SF映画大全 』でも、カッシング自身のナレーションで「クルクルのカツラを着けさせられ、その姿はまるでヘレン・ヘイズ」とまで言われております(笑)。

ヘレン・ヘイズは・・・私は『大空港』での無銭機乗常習犯の愉快なおばあちゃんしか覚えがないのですが、『・・・地獄の怪物』での男爵のルックスはまさに「おばあちゃん」です(笑)。細面で神経質そうで、ヘイズとはまるで違うように見えますが、引き合いに出されたのはたぶんこの「おばあちゃんぽさ」を指すためかと。

さて、今回の舞台は精神病院です。(といっても、セットのイメージはゴシックな監獄です)男爵に憧れて例の死体ツギハギ実験を自分なりにやっていた青年が、妖術使いの罪で逮捕され、精神病院に入れられます。彼が参照している、男爵の著作がすてきです。表紙には男爵の似顔絵いり!ちょっとダ・ヴィンチの素描みたいな、解剖状態でかっこいいポーズをとった人体が、ゴシック調のデコラティブなバックに描かれています。・・・美しい。これほしい・・・(笑)。

その青年は院内で、なんと死んだはずの男爵が、オシャレなヘアスタイルで(笑)医師として勤務(?)しているのを知ります。男爵はカール・ヴィクターと名前を変え、いわくつきの院長を威圧して、事実上院内を仕切っております。
院長を演じているのは、たしか『謎の円盤UFO』でテレパシー能力者を演じた方だと思います。いつも冷や汗かいて緊張している役なので、演技的にもデジャヴが(笑)。

男爵に心酔している青年は、さっそく助手に志願。もちろん例の実験も・・・そしてやっぱり人造人間(これが「地獄の怪物」。デザインあんまりやん!)が完成して・・・ラストはちょっと、男爵にぞっとします。ちょっとですけど(笑)。オチの感触は、やはりカッシングも出演した、精神病院が舞台のオムニバスホラー『アサイラム』と似ていました。結末というより、「オチ」という感じです。ここで精神病院という舞台が活きました。

青年役のシェーン・ブライアントという方がなかなかのブロンド美青年で、若いのに演技も落ち着いていました。どこかで見た顔だと思ったら、ドラマで『ドリアン・グレイの肖像』のドリアンをやったことがあるらしいです。私が顔を覚えているということは、もしかしたらジェレミー・ブレットが画家役をやったときのドリアンではないかと。(ドラマ自体はYoutubeでチラ見した程度なのですが、なんとなく見覚えが・・・)ブレットがドリアン役をやった昔の作品というのが見たかったので、このバージョンは興味が劣ったのですが、この方のドリアンくんなら、ダークサイドもうまく表現してくれてるに違いないです。きちんと見てみたくなりました。

そして「地獄の怪物」役が、なんと数年後に『スター・ウォーズ』ダース・ベイダーをやるデビッド・プラウズ。つまり男爵と怪物のツーショットは、モフ・ターキンベイダーなんですね!きゃ♪(ターキン&ベイダーも、一時期脳内でやおい候補になっていたので、なんとなく萌えます。いや、やおいは必然的にギャグにしかならなかったんですけど・・・(笑))

それにしてもカッシングのガリガリなこと・・・衣装も細さを強調してしまうデザインだったので、ほんとに骨と皮って感じです。それでも自分でスタントをこなしてるので、なんか内容とは関係なく「骨折れるんじゃないか~?」とハラハラしました。暴れ出した怪物の背中に机から飛び乗り、麻酔薬をしみこませた上着で怪物の頭を覆い、そのまま一緒に床に倒れ込むというアクションなのですが・・・顔が映ったままの1カット撮りなので、ごまかしようもありません。ほんとにご本人でした。封入されてた解説文によると、カットの声と同時にスタッフが拍手喝采し、怪物役のデビッド・プラウズは感動して涙をこぼしたとのこと。いやはや、映像で見てても、「こ、こんな細っこいおじいさんがよくぞっ!」と拍手してあげたくなりました。当時58歳ということなので、今の感覚だとべつに「おじいさん」じゃないんですがねえ・・・。(笑)

・・・その解説文に、やはり71年に奥様ヘレンさんが亡くなって、急に痩せて老け込んだため周囲が心配した、というお話が載っておりました。一時は自殺まで考えた、というのは、当然そうだろうとは思っていましたが…文章でそう読んだのは初めてです。キリスト教徒なので思いとどまったというのも妄想どおりです…。
(※追記 秋に作ったカッシング/リーの同人誌がそういうイメージから発想したもので、このときちょうど書いていた頃なので、こんなことを書いています)

この作品は72年で復帰した直後の時期ですから、そのへんのいきさつもあって、健気にアクションをこなす姿が周りの感動を誘ったのかもしれませんですね。…衣装のせいもあるでしょうが、他の作品より痩せ具合が際立って見えて、顔も一段と細くて、正直「当時はこんなにやつれてたのか」と、ちょっとショックでした。1~2年後の作品のほうが、少し若返って見えるくらいです。

(自伝には、奥様は闘病中6ストーン(約38kg)も痩せ、カッシング自身も3ストーン(約19kg)痩せたと書かれていました。20kg近く減ったのでは、人相も変わるわけですね。70年代頃のカッシングのルックスが好きな自分には、ちょっと複雑な感じがする情報でした…)

映画自体としては、やはり斜陽の感は否めません。やつれたカッシングからピチピチのイケメンに世代交代させて、シリーズを生き返らせたかったのかな…という印象も受けました。テレンス・フィッシャー作品のなかでは、『フランケンシュタイン 恐怖の生体実験 』がぶっちぎりで好きなのですが、それと比べてしまうと説得力や力強さ、演出の点でもやはり見劣りがします。なにかストーリーがホイホイ流れていってしまう感じがありました。

そういう安っぽさはあるものの、キャラクターの行動にちゃんと血が通っている「映画」的な行儀のよさは、その後のスプラッターなどがウリのB級ホラーとは異質です。解説には、ハマーの最盛期と比べれば劣るものの、当時の他社のホラーの大多数より優れていると書かれています。同年代のホラーって良く知りませんが、たしかにある種の格は感じました「ゴシック」という題材の普遍的な魅力も大きいと思います。

・・・とにかく、これで現在国内でDVDが出ているカッシングのフランケンは、すべて見終わってしまいました。あとは、来年リリース予定の『フランケンシュタインの怒り』を待つばかりでございます。