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2010年12月4日土曜日

BBC版シャーロック・ホームズ その3 さまざまなゲスト

 

bbcholmes.jpgピーター・カッシングのBBC版ホームズ、5本すべて見終わってしまいました。ああ、これしかないなんて。
鑑賞一本目だった『緋色の研究』エド・ビショップが出ていたことはすでに書きましたが、ほかのエピソードにも『謎の円盤UFO』などで見た顔がいろいろ出てきて、へんなところで「おなじみさん」を見る楽しさがありました。

まず、『バスカヴィル家の犬』のヘンリー・バスカヴィル…目がやたらきらきらしているのが印象的で、絶対チープな宇宙服姿で見た顔だぞ!と思ったんですが、役が思い出せませんでした。…ネットで調べたところ、やはり『UFO』にゲスト出演していました。(あー、スッキリした!(笑))あと、『四つの署名』にアセルニー・ジョーンズという警部が出てくるんですが、これがまたもや『UFO』キャストで、『超能力!UFO探知人間』のタイトルロールの超能力者をやってた方でした。

この方、ちょっと前に見た『フランケンシュタインと地獄の怪物』でも精神病院の院長役で出ていたので、カッシングとの立場の変わった共演がおもしろかったです。今回の警部役では髭を生やし、わりと尊大な態度もとる役なのですが、その分声がいいのを初めて知りました。すごく響きのいい、美声でした♪舞台とかで映えそう。考えてみたら、このホームズは1968年、『UFO』は1970年頃ですから、ほとんど同じ頃のテレビ作品なんですね。当時イギリスのテレビで活躍していた俳優さんがダブって出ているのはあたりまえかも。

特筆もので驚いたのが、『青い紅玉』でした。これはクリスマスのお話で、カッシングのシリーズの最後に、実際にクリスマスシーズンに放映されたようです。クリスマスのごちそう用のがちょうの体内から、盗まれた宝石が出てきて…というお話。ラストが大岡裁き(?)で、クリスマスらしい後味の作品です。
このお話で、偶然落とし物のがちょうを拾う、ピータースンというコミッショネアに見覚えが…。なんとなんと、グラナダ版ホームズの同じ『青い紅玉』で、がちょうを落としたヘンリー・ベイカーというおじさんをやってた方でした!!!もちろんグラナダ版があとに作られたので、自分は逆の見方をしてるわけですが、もうびっくり!同時に、意識してなされたことかどうかはわかりませんが、「グラナダ版)粋なことしてくれるなあ!」と嬉しくなりました。

このBBC版のホームズは1968年の9月から12月まで、週一回放映された番組らしいのですが(正確にはこのクールが「シーズン2」で、「シーズン1」でホームズを演じた方がシーズン2への出演を拒否したため、巡り巡ってカッシングに役が回ってきたそうです)、グラナダ版が作られるまではドラマ版ホームズの決定版、みたいなお墨付きをもらっていたほど人気だったそうで、カッシングの自伝やインタビューを読んでいても、「フランケンシュタインやヴァン・ヘルシングのほうがよっぽど何度も演じているのに、いまだにホームズのイメージで見られる」というようなことを言っています。イギリスではよほど何度も再放送したのか、一般的なカッシングのイメージになっていたようです。(東野英治郎といえば水戸黄門、みたいな?古い例で恐縮です…(^^;))

…それくらいイメージが定着していたシリーズなら、グラナダ版の『青い紅玉』を見た当時のイギリス人・・・とくにホームズファンの人たちは、かつてピータースンを演じた同じ役者がヘンリー・ベイカーを演じるのを見て、私とは逆の感慨があったのでは。

…この俳優さん、フランク・ミドルマスさんというのですが、調べてみたら生涯独身で、40年間、同じく俳優のジェフリー・トーンという方(クリストファー・リーより長身の197センチ!)と家をシェアしていた…とのこと。
腐女子脳で「すわ、ゲイ!?」と悪い癖が出たのですが…IMdbでは記述がなかったものの、英文のWikipediaでは、ちゃんと「Gay Actor」にカテゴライズされてました。
あらまあ、またヘンな株が上昇してしまいましたよ~♪(笑)。

…まあそれはともかく、この方はハマー映画の『フランケンシュタイン・恐怖の生体実験』などでも脇役でちらちら見かける方なので、そっちの意味でもカッシングのホームズと並べて見るのは楽しかったです♪

ひとつひとつのエピソードについて感想を書くとえらく長くなりそうなので、これはやはり、できれば同人誌にしたいです。(^^;)…ほんとにつくづく、字幕のついたDVDを国内で出してほしいです…。せっかく人気俳優のホームズ映画が封切られて盛り上がってるんですから、どうせなら便乗(?)して出してくれませんかね。(笑)

   *   *   *   *   *   *

5本のなかでもとくにおもしろいと感じるところがあるのですが、そのどこがおもしろいかと言うと、ワトスンとホームズのやりとりなんです。特に『ボスコム谷の惨劇』のやりとりはおもしろくて、「こんなにおもしろいシーンあったっけ?」と原作をカンニングしたら、原作にはそんなシーンはないんです…台詞が聞き取れない部分があってくやしい!とにかくこの二人の会話のテンポがたまりません。ホームズが説明なしに先走って、ワトスンが「えっ…?」と当惑する一瞬とかが、とくにたまりません(笑)。

聞き取れた部分だけ、ちょっと意訳でご紹介しますね。『ボスコム谷の惨劇』の1シーンです。沼地で息子が父親を殺した、という事件なのですが、ホームズは息子の潔白を証明しようとします。

殺人現場にやってきたホームズは、かたわらのワトスンをほったらかしたまま、地面を這い回ったり、ワトスンを木の陰に立たせて離れて見て、一人で満足そうに「Ah!」と言って手を打ったりしています。ワトスンはわけがわかりませんが、調査の邪魔はするまいと黙っています。ホームズは漬け物石くらいの石を拾い上げ、観察したあと無言でワトスンに渡します。ワトスンわけがわからず。

ワトスン: 「…それで?」

ホームズ: (たった今ワトスンの存在に気づいた、という感じで)「ああ、ワトスン!」
      (石を指して)「その石を大事に持っていてくれたまえ」

ワトスン: 「…なんのために?」

ホームズ: 「それが凶器なんだよ」

ワトスン、驚いたあと、持った石を見る。(目つきがいいです。やりすぎなくて(笑))
ホームズ、地面を見ながらあたりを歩き回り、くるりと回ってしゃがんだ姿勢で体を前後に揺らす。(すごくかわいいです!)

ホームズ: 「それから…びっこを引く男を見つけなくちゃ!」

と、まじめくさった顔でワトスンを見るホームズ。
ワトスンわけがわからず当惑顔。

…いや、文章ではこのユーモラスな感じは再現できませんですね。字幕入りが出て、日本全国津々浦々のレンタル屋に常備されてほしいっ!

…余談ですが、イギリスではほとんどの人がカッシングの若い頃の姿をテレビで「つい最近」見ていたため、年をとったご本人に「…ひょっとして、ピーター・カッシングのお父上では?」と声をかける人がいた…というのが、トーク番組などでのカッシングの持ちネタになっていたようです。何度か目にしました。さらに晩年になると、老けすぎて本人だと言っても信じてもらえないので(笑)、「ピーター・カッシングの祖父です」と名乗ったというジョークも出てきました。

晩年にも一度、『The Masks of Death』というタイトルの(ドイルの原作によらない)単発ドラマでホームズを演じたらしいのですが、これは海外でもVHSしか出ていないようです。自伝に写真は載ってるのですが…。老けにあわせた、いったん引退したあとのホームズという設定らしいです。見てみたいです…。